養殖わかめの収穫は日の出から
やはり漁は朝が早い。しかも今回同行させてもらったのは養殖わかめの収穫だ。
「わかめは日光に弱いので、品質を保つために収穫は午前1時頃から日の出までの間に行うんです」。そう教えてくれたのは重茂漁業協同組合の北田敦夫さん。それに加えて、比較的海が凪である時間帯であるこの時間に作業を行うのだという。
中田は日の出と共に養殖わかめの収穫に同行させてもらった。当たり前だが、まだあたりは暗い。だが、わかめ漁師さんたちの一日はもうとっくに始まっているのだ。
わかめの「刈入れ」に挑戦
岩手県はわかめ養殖の盛んな土地だ。現在、日本国内の生産量は、生換算で約6万トン、三陸産の生産量が岩手県が2.5万トン、宮城県が1.5万トン、合計4万トンで、岩手県が生産量日本一。その内、重茂産は3,000トンの水揚げがある。毎年、6月~8月に天然のめかぶの胞子をシュロ縄につけて、海の中で育てたあとに、11月ごろにそのシュロ縄を太い幹縄に巻き付けする。1月、2月に山の雪解け水が海に流れてきて一気に成長し、3月に刈り取りのが一般的なわかめ。わかめは1年草なので4月中ごろまでに全部刈り取りするのだという。
本州の最東端にある重茂半島。この地域でとれるわかめの特徴は、肉の厚みだ。重茂は外洋に面しているので潮が早い。そのためよく流れにもまれて肉質が厚くなるのだという。「肉厚わかめ」というブランドで販売しているのだ。
わかめの収穫の際に登場するのは「カマ」。養殖場から文字通り“刈りとる”のだ。中田もカマを渡されて、刈入れのお手伝い。これがなかなかの重労働だ。それもそのはず、取材に伺ったときはもう春の海、わかめはたっぷり成長しているのだった。
暖流のわかめ、寒流の昆布
船いっぱいに収穫したわかめは陸に水揚げると最初に海水で茹でる作業を行う。そして塩漬けにして保管する。こうした加工まで行って、1日の作業が終わる。わかめの季節が終わると次は昆布というように一年はまだ続いていくのだ。
わかめは暖流で育つ海藻、昆布は寒流で育つ海藻、その両方が十分に収穫できるのは重茂の海の特徴だと北田さんは話す。
もうひとつ、重茂漁協では「春いちばん」というブランドわかめを出荷している。これは1月~2月の早い時期に収穫する若いわかめだ。栄養価も高くやわらかいことから「生わかめのしゃぶしゃぶ」などで食べると絶品だという。
家族みんなで行うわかめ養殖
重茂半島も東日本大震災の被害は大きかった。浜の岩場に残る津波の痕跡も教えていただく。しかし、甚大な被害のなかでも早い時期に共同で船を購入及び船を修繕し、震災後の5月末には共同で天然わかめの採取が行われ、更にわかめ、こんぶの養殖施設や加工場が整備されたことで、震災前に養殖漁業を181名が営んでいたのが、取材時には、128名が養殖漁業を再開している状態だという。
わかめ養殖は、家族みんなで分担して行う家がほとんどだ。さきほど経験したとおりの重労働なので高齢者ではなかなかつとまらない仕事。しかし、若い世代がきちんと仕事に入っている。一緒にわかめを収穫をした中村淳一さんは「都会に行った若い者も、帰ってくる人が多いんだよ」と話してくれた。
中田の「こちらでわかめが盛んで、若い方が多い理由は?」という問いには「仕事がある