1センチに50年かかる鍾乳石
「1センチに50年」とは何のことかというと、鍾乳洞からつららのように下がっている鍾乳石が成長する速度。1年に50センチではなくて、1センチに50年…。気が遠くなりそうな時間だ。鍾乳洞とは石灰岩が地下水などの水に侵食されてできた洞窟。鍾乳石ですら1センチに50年かかるのだから洞窟がその姿になるにはどれだけの時間がかかったのだろう。
岩手県には全国でも有名な鍾乳洞がある。東部に位置する、下閉伊郡岩泉町にある龍泉洞だ。いつもより少しの冒険気分で、いざ洞窟へ。
全国でも有数の鍾乳洞「龍泉洞」
日本三大鍾乳洞にも数えられる龍泉洞は、1938年に「岩泉湧窟(龍泉洞の旧名)及びコウモリ」という名前で日本の天然記念物に指定された。
洞窟そのものの特徴としては、高低差が大きいこと。洞窟内の高低差は約250メートルもあるそうだ。そのため階段も多く、洞窟の深さに驚く。
そしてもうひとつ、地底湖があることで有名。複数の地底湖が確認されておりそのうち3つを公開している。第三地底湖で水深98mもある。透き通るような水を豊富にたたえて幻想的な風景だ。ちなみにこちらの水は以前、名水百選に選出されたこともあった。それだけきれいな水なのだ。
洞窟に人が住んでいた?
龍泉洞には1967年に発見された龍泉新洞という鍾乳洞もある。こちらも見学させていただく。さっと見渡すとコウモリの姿が。
「眠ってますね」と案内してくれた八重樫園さんは平然としているが、やはり洞窟にコウモリというと、その怪しげな雰囲気に尻込みしてしまう。
武田さんによれば以前はコウモリだけでなく「人」が住んでいた歴史もあるのだという。土器も見つかっており、食料にしたのだろうか生物の骨も発見されたそうだ。「洞内のほうが外よりも温度が変わらないので、生活はしやすかったのかもしれません」と説明をしてくれた。
それを聞くと何だか不思議な気もしてくる。1センチに50年もかかるという時間の流れ。ということはつまりきっと、ここの風景は当時とそれほど変わっていないはずだ。どんな人がどんな生活をしていたかはわからないが、目にしている風景は数千年を超えて共有している。自然の大きさを肌で実感する空間だった。