陶芸に新たな伝統を 陶芸家·本間伸一さん/岩手県一関市

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「なんとなく」陶芸の世界へ

数日間穴窯に作品を入れ、赤松で火を焚き続けて作られる藤沢焼。その工程のなかで作品に付着した赤松の灰が溶けて、独特の色合いが現れるというのが特徴だ。土の肌合いとシンプルで力強いフォルムが存在感を強く印象づける。
その藤沢焼を始めたのが今回お話をうかがった本間伸一さんだ。1972年に岩手県藤沢町に築窯し、以来40年にわたって作陶に励んでいる。ただしお話を聞くと陶芸の世界に入ったのは「なんとなく」だという。宮城で生まれ育ち、高校から東京にいったがどうも馴染めずに将来は地方で暮らしたいと考えていた。大学も単位を取らずにいたが、そのときに「なんとなく」焼物の世界に入ったのだそうだ。
「まず美濃にいき、5、6年やってと言われた」と話をしてくれた。そのあと宮城で焼物をしていたが、「薪で焼物をやってみたい。赤松がいい」と思うようになり、この地に移ったのだという。岩手の藤沢町近辺は赤松が多く生えている場所。だから藤沢焼になったのだ。

自由を体験、野焼き祭り

また本間さんは「土と炎の芸術 藤沢野焼祭」というお祭りにも関わっている。遥か昔の時代、先人たちが土器を焼いたように、焚き火の中で作品を焼くお祭りだ。参加者は作家ではなく、幼稚園児からご年配の方までの一般の方々。粘土で形作った作品を凹んだ穴に置き、そこに木をくべて火を付ける。6~8時間かけて燃やし続け、そのおき火のなかで焼成が続いて作品が完成するという。
シンプルかつ大胆、原始的な焼き物を体験することができるのだ。現在では県外からも見物客がくるほどのお祭りになった。
「普段は会社員や農家の人たち。でも、本当にすごいのを作るんですよ。発想が作家とはまったくちがうんです。作家ではとても出てこないようなアイディア、デザインがある。作る自由さってすごいなと。こんなもの自分たちではとても作れないぞって思うものに出会えます」

けろくろで陶芸体験

場所を工房に移して器作りを体験させてもらった。本間さんは地元の土のほかに沿岸部の久慈の土なども使う。そのふたつを見せてもらう。
「土の色ってこんなに違うんですね」と中田がびっくりするぐらいはっきりと違う色だった。もちろん特性も違う。ときにはそれらを混ぜ合わせて作陶することもあるという。
体験させてもらったのは、けろくろ。足でろくろをまわしながら成形をしていく方法だ。中田も夢中になってけろくろに向かうが、やはり自分の作業に納得がいかない。
「足だけ使うのは得意なんですけどね。でも手と足を両方使うのはやったことないから…」と笑いながら作業を進めてようやく完成。本間さんからは「沖縄のパナリの壺みたいでいいですね」とお褒めの言葉をいただく。
本間さんとのお話しから感じられる「自由な発想」というキーワードが印象的だった。伝統に習って、でも伝統にしばられない。そんな雰囲気が漂う工房だった。

ACCESS

藤沢焼粉香木窯
岩手県一関市藤沢町
URL http://www.morinomirai.com/shop/honma/index.html
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