サンマのプロ、買受人の存在
宮城県の水産業の水揚げは北海道に次いで全国第2位。石巻、気仙沼といった有名な港を中心にたくさんの海産物を私たちの食卓に提供してくれている。
今回はそのなかの女川魚市場に伺った。女川の名物は何といっても秋の味覚、サンマ。ちなみに、同じ宮城県でも気仙沼はカツオの一本釣り漁、石巻は巻き網で捕獲する様々な魚、塩釜は近海マグロの水揚げが盛んだという。魚を捕獲してきた漁船は各港に入港、市場の仲介により買受人に販売する。その港ごとに買受人の得意とする魚があるのだという。
「女川が一番高い」 と船頭さんがいうように、女川の買受人は他の港よりも高くサンマを買い上げる。そのため、サンマ船はこぞって女川に水揚げするのだ。もちろん買受人の見極めは厳しい。漁船は可能な限りサンマを新鮮な状態に保って水揚げするので、おいしいサンマが集まるというわけ。全国でもトップ3に入るサンマの名産地なのだ。
震災から少しづつ設備を
女川魚市場は年間170億円もの売り上げを誇った一大魚市場だったが、深刻な “魚離れ” の影響もあり徐々にその売上高は落ちてきていた。そこに東日本大震災で甚大な被害を受けてしまった。
案内をしてくれた女川魚市場専務の加藤さんの表現を借りれば 「すべてがなくなった」 状態だった。
震災後、なんとか市場も再開し、徐々に水揚げも行われているが、水産業の復活に必要なのは冷蔵施設だ。女川港に水揚げされる魚のうち、そのまま鮮魚として出荷できるのは約30%。残りの70%は加工用として冷凍される。そのためには保管しておく巨大な冷蔵庫が必要になる。
町全体に被害を受け、冷蔵施設も失ったために、2011年は水揚げを制限せざるを得なかった。
取材の際、少しずつハード面の設備が戻りつつあった。港は一番大きな船着場の建設の真っ最中。地盤沈下した土地を、1mかさ上げする工事が進められていた。また、2012年10月にカタールから支援を受けて建設した大型貯蔵施設が完成した。
真新しい施設を案内していただくと、津波の経験をもとに、緊急時にはシェルターになるような工夫が凝らされていた。沿岸部で安全に働くことができるように、何より命を守るための施設として設計を考えたという。
美味しいサンマの食べ方は?
「これまで全国の多くの方々から支援をいただき再開することが出来ました。心から御礼を申し上げます。でもね、我々にとっては、消費者のみなさんに魚を食べてもらうのが一番の支援です」 加藤さんはそう話す。そこで 「サンマのおいしい食べ方は?」 と中田が聞くと 「刺身」 と答えてくれた。
「何といっても刺身が一番。新鮮ですから。刺身だったら、マグロより美味しいですよ!それから、サンマをたたいてネギと味噌と和えて食べるのも美味しい」
こうしてお話を聞いているだけで、食欲が湧いてくる。定番の塩焼きも格別だが、地元の方はサンマのつみれ汁も大好物だとか。サンマが水揚げされる季節は9月上旬から11月下旬まで。
女川が誇る美味しいサンマを多くの人が待っているのではないだろうか。