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古くから鋳物職人の住む“堺”
堺市は、日本最大の前方後円墳、仁徳天皇稜がある地。5世紀前半に作られたのではないかと考えられているが、あれだけのものを作るのには相応の道具が必要だったはずだ。それを証明するかのように、堺では鋤や鍬などの土工具が多く出土している。堺は古くから、鉄や銅、鋳物の職人たちが住む村だったのだ。
堺では、1570年代の天正年間に、たばこの葉を刻むためのたばこ包丁が作られるようになり、江戸時代になると幕府の専売制がしかれた。それによって、堺の刃物はその名を全国に轟かせたのである。
伝統の火造りで刃物作りを体験する
その600年にも及ぶ伝統を受け継いで、刃物を作り続けているのが、伝統工芸士の榎並(えなみ)正さん。現在でも火造りで刃物を作っている職人さんだ。火造りというのは、熱した鉄を叩いて成形していく方法。刀鍛冶といってすぐにイメージする、火花を散らしながら「トンカン、トンカン」やる光景に近い。
今回中田は、その火造りの見学と体験をさせてもらった。溶かした鉄を型に流し込むのとは違い、時間と労力がかかる。それでも、1本1本に念をこめるように鎚をいれ、刃物が生み出されていく。
鉄砲伝来のときには、その技術をいかして、鉄砲の器具も多く作られたという堺の職人技。その時代その時代を背負いながら、今に継承されている。