まったく手をかけない自然農法
「寺岡自然農園」は、その名の通り自然農法で作物をつくる農園だ。自然農法というからには、当然、化学肥料も農薬も使わない。とはいえ、それだけなら別段、珍しくもないかもしれない。しかし、ここの農園のすごいところは、畑も耕さない、草も抜かない、とにかくまったく畑に手を入れないという、まさに“自然”のままに作物を作っている点だ。
無農薬農法から自然農法へ
寺岡自然農園の園主・寺岡一郎さんは、7年前にサラリーマン生活を抜け出して就農した。安全でおいしいものを作りたい一心で、化学肥料を使わず、無農薬で作物を育てようと試みた。トウガラシ入りの焼酎で手製の肥料を作ったり、毎日を草抜き、虫取りに費やしたり……、さまざまな方法を試してみたという。
しかしある日、農園の片隅でこぼれ種から育った野菜が大きくなっているのを見て、「自然に手を出しすぎなのではないか」と感じたという。そこで、あらためて自然農法を勉強し直し、現在の“なんにも手をかけない”という農法にたどり着いたのである。
自然のサイクルに無駄なものはない
寺岡自然農園では、自然で育ったものには、必要な栄養分はすべて含まれていると考えている。そのため、“とうだち”した野菜や、間引いた野菜も出荷して食べてもらっている。“とうだち”というのは、主に白菜や大根などのアブラナ科の植物で花芽がついてしまった野菜のこと。つまりは育ちすぎてしまった野菜である。
一方、間引いた野菜は、野菜を大きく育てるために、途中で抜いた野菜なので、若い野菜ということだ。野菜には、それぞれのステージごとの味わいがあるため、とうだち野菜も間引いた野菜も、工夫次第でおいしくいただくことができる。
自然のサイクルが生み出したものに、無駄なものはない。そんな当たり前のことに、あらためて気付かせてくれる農園である。