糸を紡ぐということ 「町邦楽器原糸製造保存会」/滋賀県長浜市

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伝統を受けつぐ、糸取りの工房

一面に田園が広がる、緑豊かな木之本町大音(おおと)。今回訪ねることになった佃三恵子さんの工房に近づくと、コトコトと小さな音が響いていた。糸を紡ぐ音だ。平安時代から1000年以上も変わらない音だ。
ここ賤ヶ岳(しずがたけ)の北に位置する余呉(よご)湖一帯は、水上勉の小説『湖の琴』の舞台となり、その名を全国に知らしめた「生糸の郷」。以前は大音でも農閑期の内職として生糸作りが盛んで、どの家でも女性らが糸取りをしていたという。しかし明治以降その姿は消えていき、現在では佃さんの工房一軒を残すのみになってしまった。

繭から糸を取る

座繰(ざぐり)器という機械に向かい、約80度に熱した鍋で繭をほぐし、わらの箒で引っ掛けて糸を取っていく。大変な集中力と根気のいる作業だ。そのため、昔から嫌われる仕事だったと佃さんは語る。
しかし、値打ちのある仕事、と佃さんはこの伝統の技を残すために1991年に「町邦楽器原糸製造保存会」を発足した。現在では女性9人がメンバーに加わり、伝統の灯を受け継いでいる。
佃さんによって紡がれた生糸は、「丸三ハシモト」に卸されて邦楽器の弦になる。コトコトという糸を紡ぐ音は、今度は和の音を紡いでいくのだ。

ACCESS

町邦楽器原糸製造保存会
滋賀県長浜市木之本町
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