木材で作られるダイヤモンド。「指物師 鈴木光爾」/栃木県小山市

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指物って何?

指物とは、釘や接着剤などの接合材料を使わず、木と木を組み合わせることによって組み立てられる木工のこと。作られるものは、小箱や花器などの小さなものからタンスのような大きな家具まで様々だ。その名の通り、物指しで測ってピッタリと作るので、まるでゆがみがない。釘を使っていないのに、ぐらぐらとしない。でも、修理するために板を外すのは職人さんが金槌でトントンと叩くだけですぐに外れる。寸分の狂いもない精巧さを生み出す技術が可能にする工芸だ。
特に有名なのは、大阪の唐木指物、京都の京指物、東京の江戸指物だが、鈴木光爾(すずきこうじ)さんの作る作品は、そのどの流派にも存在しない唯一無二のものだ。

鈴木さんの代名詞「ダイヤカット」

どこにもない指物とは「ダイヤカット」と呼ばれている鈴木さん独自の技法を用いた作品だ。木の組み合わせで、ダイヤモンドのような姿を表現する。こう書くと簡単に聞こえてしまうが、これはものすごい技術なのだ。指物は接着素材を使わないために、角面が多くなればなるほど難しい作業になる。しかも、指物で最高の技術とされているのは、木材を薄くすること。となれば、ダイヤカットがどれだけ精巧な作業を要するかは想像できるのではないだろうか。
鈴木さんの作品はまるで一本の太い木から切り出したかのようにしか見えないほど、ピッタリと緊張がある。しかも中田が手に取らせてもらうと、想像以上に軽い。これは木が”薄い”からなのだ。今やダイヤカットは鈴木さんの代名詞。どの展覧会でも鈴木さんの作品だとすぐにわかってくれるという。
「ただ、平面の作品を出すと、今回は休みなのって聞かれちゃうんですけどね」と鈴木さんは笑っていたが、それだけダイヤカット=鈴木光爾というのが浸透している証拠だ。

ワインが宙に浮く!?

このダイヤカットを生み出したのは、ある種の負けん気。
「普通の箱なら誰でもできる。展覧会に出してると、人がやっていないものを作りたいっていう気持ちになるんです。技術は上を目指さないと伸びないわけでしょ」
そうして誰も作っていないものを目指した結果、ダイヤカットが生まれたのだ。「技術は上を目指さないことには伸びない」という鈴木さんは、現在でも年に数回の展覧会への出品をかかさない。
 また”誰もやらないこと”というので、中田はじめスタッフ全員が驚いたのが、ワイン立て。何がすごいかというと、板一枚ということ。斜めになっている板に穴があいていて、そこにワインボトルを指すと、ワインが宙に浮いているように見える。けれど驚くのは、その斜めの板がどこにも接着されていないこと。板はそこに置いてあるだけ。でも倒れない。これも指物師の精巧な技術が可能にした作品だ。ワイン好きの中田もこれには舌を巻いた。
「これ絶対にびっくりするよね。プレゼントとかにいい。ほらって言って板だけ一枚渡すの。でもワイン立て。絶対にいい」
そう言って、はしゃぐように何度も不思議そうに板を外しては眺め、ワインを指しては眺めていた中田だった。

ACCESS

木工芸工房 鈴木工匠
栃木県小山市宮本町2-2-34
URL http://mokkouhin.com
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