京扇子の原型とは
「宮脇賣扇庵」は、京扇子を販売する工房。京扇子の原型は、東寺の仏像の腕のなかから発見された最古の桧扇だ。薄い桧の板を重ねて綴り合せたもので、877年の作と言われる。その後、竹と紙で作った紙扇が作られ、さらに時代が下って現在と同じものがつくられるようになったという。
京扇子は暑さをしのぐためのうちわとして使われるだけでなく、能や狂言、舞踏、茶の席、香の席など、さまざまな場面で使われてきた。それに応じるようにして、描かれる絵や文様、デザインなどが多種多様に発展し、さまざまな京扇子が作られるようになった。
フランス・ブルボン王朝の時代の貴婦人がふさふさの扇子を使っているシーンをマンガなどで見かけたことはないだろうか?じつは、もともと13世紀ごろに日本から中国に伝わった扇子が、シルクロードを経てヨーロッパに伝わったものだという説もある。
のちにそれは逆輸入され、絹扇として日本でも人気を博すことになるが、意外にもこんなに早い段階から日本文化は海外にも影響を与えていたのだ。
扇作りの繊細さを知る
中田は、扇作り職人 寺村さんの作業場にお邪魔させていただいた。寺村さんは扇作りの最後の仕上げを担当されている。扇の紙に芯を差し込む作業を体験させて頂くがコツを掴むのは難しく少しずれてしまう。結局、寺村さんに最後まで扇を作りあげていただきながらお話を伺った。
「扇作りは約30工程があり、どの工程にも専門の職人がいます。扇はお米を育てるのと同じほどに手をかけて作っているんです。」
一日に仕上げる数は約400本。最後の工程は製品の最終チェックまでも求められるのだという。この精密な作業の積み重ねが扇を生み出すのだ。
日本文化に彩りをそえる京扇子
1824年に創業し、180年以上も扇を作り続けてきた宮脇賣扇庵。店内には扇の数々と並んで、名だたる名日本画家の絵や書、掛け軸などがあり、これもまた見どころである。扇が様々な文化に彩りをそえてきた歴史を垣間見ることができる。