山廃の味わいを楽しむ酒
「田嶋酒造」は、1840年代から続くという、老舗酒造。その代表銘柄は「福千歳」で、蒸した米や麹を粥状になるまですりつぶす「山廃仕込み」という製法にこだわっている。
山廃仕込みというと、一般的には酸味が強くてどっしりとした味で、酒好きのための酒という印象があるが、「福千歳」は上品な香りとふくよかな味わいが特徴。福井県大野市の契約栽培農家で作られている「越の雫」という酒米を使用した「福千歳 徳」は、独特の旨みがあるお酒。
田嶋社長と杜氏の武藤さんも「どれかひとつと聞かれれば、この徳。」という1本だ。世界的な酒類品評会IWC2008(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)で銀賞、2009年の全米日本酒歓評会(JOY of SAKE)で金賞を受賞しており、味には定評がある。「山廃仕込み」に挑戦してみたい酒ビギナーにもオススメだ。
木槽で絞りたい
蔵の中では、吟醸や大吟醸を絞るのに使用する伝統的な「木槽(きぶね)搾り」の機械を見せていただく。昭和40年から使い続ける木槽は、作業に手間がかかるが、重要な役割を果たす道具だ。
杜氏の武藤さんがこう話してくださった。
「何日も手をかけて作りますから、いざ絞るときには、どうしてもここで絞ってやりたくなるんです。大変は大変ですが。」
お酒と向き合う姿勢も、多くのファンに支持される理由かもしれない。
日本酒コスメを開発
そして「田嶋酒蔵」には、新たに注目を集めている商品がある。それが「大吟醸酒化粧水」。アミノ酸やビタミン、ミネラルなどを豊富に含んだ日本酒は、昔から美肌効果が高いことが知られているが、この化粧水はなんと大吟醸酒をぜいたくに配合。また、酒粕にはシミやソバカスを防ぐ働きがあり、美白効果も期待できる。しかも、石油系の防腐剤などは一切入っておらず、完全自然派化粧水。各メディアでも取り上げられ、人気はうなぎのぼりなのである。シリーズとして、大吟醸酒粕石鹸や大吟醸酒クリームも登場、好評を博している。
「大吟醸化粧水」のように、面白い商品を開発したのも、日本酒が日本人の体に合うものだから。日本酒で福を得る。田嶋酒造の挑戦はこれからも続いていくのだ。