本当においしい日本酒やワインを売る
四代目の君嶋哲至さん自らが、日本全国、世界中を回り、美味しいお酒を舌で見つけてくる。そうやって自らの舌と目で選んだおいしい酒やワインを販売し、人気を呼んでいる酒販店が横浜君嶋屋だ。
君嶋さんの“知識”と“目利き”はワインの本場でも数々の称号を受け、飲食店やホテルからも信頼されるお酒のセレクターとして活躍している。また、日本酒の蔵元たちとともにロンドン、パリ、ニューヨークなどで日本酒セミナーや各種イベントを行うなど、日本酒を国内外に向けて紹介し酒造業界の発展にも積極的に務めているのだ。
立ち飲みできる酒屋からの変身
しかし、1892年から続く老舗酒販店の横浜君嶋屋は、君嶋さんが社長として就任するまでは、現在と営業スタイルがまったく違うものだったという。もともとは酒販屋だけれども飲み屋でもある、立ち飲み屋スタイルの酒販店だったという。お酒もいいものばかり置いてあるわけではなかった。しかし、そこを君嶋さんが一念発起して「たとえ無名でも旨い酒を取り扱うセレクトショップ」にしたのだ。
若い世代にSAKEをアピール
取材での面白いやり取りを。
「今後の目標、目的はなんですか?」(中田)
「横浜をロックシティに変えようと思っていましてね」(君嶋さん)
「(笑)いや、その、君嶋屋さんのお仕事としての目標…」(中田)
「はい。君嶋屋の仕事としてのロックシティです」(君嶋さん)
スタッフも何のことやらわからずにいると、チラシを持ち出して君嶋さんが説明を始めた。ロックのライブの話。「ずっと若い世代の人にも日本のいいものを飲んでもらおうと思って考えていたんですよ。そこで思いついたのがロックライブ。ライブハウスってワンコインでお酒を頼むじゃないですか。あのお酒を安いものでなく、君嶋屋の酒に変えて出しているんです」
MADE IN JAPANをテーマに、若い世代にいいもの、うまいものを提供する。それが横浜ロックシティ計画なのだ。そんなふうに独自の感性で、とにかくいいものをみんなと分かち合いたいという想いを抱いているのだ。
お酒好きのふたりがワインを語る
いいものを分かち合う。それは取材で十分に伺えた。というのも、何本ものワインをその場で開けてくれたのだ。なかには「こんな機会でもないと開けないから」という希少なものまであった。そして自分が一口。もちろん中田にもすすめる。そのすすめ方がまた酒好きそのもの。
「黄色っぽい色をしてますよね。かなり熟成されてるんですけど、なかなかこういう風にはならないんだよな。シャルドネの感じがはっきり出てますよね。これは日本産のものではなかなかお目にかかれない」と常にこんなふう。
中田も「たしかに、これはすごい。香りもすごいし、でも味はさっぱりしてる」と受ける。「北海道にね、本当においしいのがあるんですよ」。「うん、たしかに、これはいい」。いやでもね、これはもうちょっと前のほうがよかったかな。熟成が甘いかな…。
とこんなふうに、お酒の好きなふたりは取材ということも忘れて、途中からはお酒談義に盛り上がる。最後は、ただただ、本当にお酒が好きだからこそ成り立った取材だったのだ。