茶業界に“最高位”をつくらせた男
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利き茶とは、茶葉の色や形を見たり、淹れたお茶の色、香り、そして味を確かめて、茶葉の品種や産地、品質を見極めること。
前田文男さんは、茶師のなかでも利き茶の名人と呼ばれている。
茶業界に身を置いてわずか2年で、全国茶審査技術競技大会の全国大会に出場。初出場にして10位に入り、六段位を取得した。1997年に行われた競技会では、それまでの規定では九段が最高位だったのに、前田さんがその最高段位を超える成績を収めたため、急遽協議が設けられた。結局、前田さんのために十段位が制定されたという伝説を持つのだ。
前田さんの会社に伺うと、水出しの緑茶を振舞っていただいた。
「最近、本当に日本茶がいいなぁと思うようになってきました。」と中田。
身近でありながらよく知らない、お茶についての基本的なお話から伺う。
より良いお茶を作るための“ブレンド”作業
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お茶にもブレンドがある。それが合組(ごうぐみ)と呼ばれる手法だ。
数種類の茶葉を混ぜることによって、「香甘苦渋」(香り・甘さ・苦味・渋み)の調和をとり、より奥深い味わいを出す。より良いお茶を作るためにブレンドを行うのだ。
前田さんはこのスペシャリスト。香りを利きわける感覚と、豊富な知識とによってブレンドしていく。
前田さんから「中田さんもやってみてください」と促され、中田も合組に挑戦することになった。
宮崎産、高知産、静岡産の茶葉を、あわせて100gになるようにブレンドする。それぞれを飲みくらべると、確かに全く異なる特徴がある。
できあがったお茶は、前田さんいわく「香りの強い、インパクトのあるお茶」。
「おもしろい、これもいいですね」と言ってくれたが、中田は「もうちょっとマイルドなものにしたかったな」と、悔しがっていた。
苦味、渋み、甘み、香りが一番調和するのが70度
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最後に中田から「おいしいお茶の淹れ方は?」と、質問。
前田さんは「飲むのには70度が適温。苦味、渋み、甘み、香りが一番調和するのが70度なんです」とおっしゃっていた。
「とはいえ、やっぱり好みなんです。自分が美味しいと思う温度や茶葉の量を見つけてもらうのが一番いいですね」。
静岡の名産であるお茶、実は日本各地に産地があり、とても個性豊かだという。
それもまた日本の大きな魅力の一つ。これからも、急須で淹れたお茶を味わうことを大事にしたい。そう感じる出会いだった。
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