栃木でしか食べられない”とちひめ”
いちごの王国といえば、栃木。栃木のいちごといえば、とちおとめ。そんな具合に誰でも知っているとちおとめだが、現在は全国各地でとちおとめの栽培が許可されているいるため、とちおとめ=栃木県産のいちごというわけではない。
逆に栃木でしか食べられないいちごがある。それがここ小島農園で栽培されているとちひめだ。実がすごく柔らかくて遠方への出荷ができないため、主に観光いちご園で作られているという。小島洋一さんによれば栃木県内でもとちひめを生産している農家は20軒もないのではないかということだ。
おいしいいちごの見分け方。
とちひめの特徴は、甘味が強くて酸味が少ないこと。甘さと酸っぱさの均整がとれたとちおとめと食べ比べると味の違いがよくわかる。とちおとめとはまた違ったおいしさがあるのだ。その味を求めて農園のリピーターになってくれる人もいるという。
中田がおいしいいちごの見分け方を聞くと、まず「種と種の間が広がったもののほうがおいしい」と教えてくれた。 一般の消費者だとなかなか目がいかないところ。さらに「これは自分の感覚ですけど」と断って教えてくれたのが”赤すぎないこと”。根元まで赤いものは食感を損なうため、自然な味わいが出ないという。これも私たち素人には考えつかないことだ。
食べる人と近くにいる。
「いちご農家として一番気をつけていることは?」と中田が聞いた。味、形といった答えが返ってくるかと思ったら回答は「お客さんが喜んでくれること」。 「味の感じ方は人それぞれで難しい。だからなかなかこれが最高というわけにはいかないんです。うちはとちおとめも生産しているので、いろいろわかります」 そう言って、小島さんはとちおとめを差し出した。 「こっちもおいしいでしょ。とちおとめが好きな人も、とちひめが好きな人もいる。日々考えています。だから、観光農園として営業しているとすごくいい。例えば、いちご狩りをしてもらってその場で食べてもらえれば、すぐに反応が返ってくる。とちひめの直売りもその場ですぐにフィードバックがもらえるから、すごく参考になるんですよね」
自分がおいしいと感じるものを追求する農家いるかもしれないが、最終的には食べてもらう人のことを考える。例えばお酒も甘口から辛口などいろいろなタイプがある。いちごもまた然り。ただそれを突き詰めるのは難しい。だから小島さんは”食べる人”と近くにいるのだ。