組子細工と木の表情によって、建具が豊かになる
嶋野木工所の嶋野浩司さんは、障子や欄間などの装飾建具を作る、組子細工の職人さん。
まずは作品を見せてもらう。
その精密さに声を失う中田。
「これは、もう、絵、ですよね」
思わず作品に魅入ってしまう。
「色はどれぐらい出せるんですか?」
「木によって色が違うので、けっこう出せます。黄色や緑も出せるんです」
「メインに使ってるのは檜ですよね」
「そうですね。ほかに、けやきのような固い材料を使えば重量感が出るし、楢の木を使うとまた違った質感が出る。それぞれに合った材料を見極めなくちゃダメなんです」
ひょうたんの描かれた障子を見て、中田が「これって、開けたときの重なり具合の見え方もおもしろいですよね」と言った。
「たしかに」とうなずいた嶋野さんは、「そうだ」と何かを思い出したように、あるドアを見せてくれた。
何の変哲もないドア。
だが、中の電気を灯すと、ぼんやりとひょうたんの絵が浮かんできた。
「おぉ。これは中に彫り込んであるんですか? おもしろい」
「これは組子じゃないですけど、彫った後に薄い板をあてがっているんです。そうするとこうやって絵が浮かび上がるんですよ」
精密な組子の魅力を広めたい
ひととおり作品を見終え、工場の見学に。
製作中の組子を見て、中田がひとこと。
「本当に細かい。気の遠くなる作業なんでしょうね……」
「そうですね。ひとつひとつのパーツを作るのは大変です。でも、組み上げていくときは逆に寝るのも惜しいほど、楽しくなるんですよ」
「パーツもご自分で?」
「はい」
すべてを手仕事で完成させる。
「まだまだ組子を知らない人がいる。だから、まず知ってもらいたい。そのためにはどうしたらいいか、いつも考えています」