一心に、線を削り出す
1978年千葉県生まれの若き陶芸家、和田的(あきら)さん。 33歳にして日本陶芸展や東日本伝統工芸展などで数々の入賞歴を誇る、期待の陶芸家だ。 中田が主宰する「TAKE ACTION FOUNDATION」が行った伝統工芸支援プロジェクト「REVALUE NIPPON PROJECT」では、日本を代表するアーティストとともに、コラボ作品を披露した。
そんな和田さんの作品の特徴は、真っ白な白磁と、彫刻刃で削り出された骨格のある直線。天草陶石を主原料にした粘土をろくろで成形し、乾燥させたあと、ナイフで形を彫り出してから焼く。それによって、シャープなラインを持った陶磁器ができあがる。
今回は、和田さんのアトリエにて、中田もこの削り出しの作業を体験。 あらかじめ和田さんが削り出すラインを指定したものを作っておいてくださったので、そのガイドラインに従って、ナイフで慎重に削っていく。
陶芸は人に寄り添う身近な存在
「これは……、1個でどのくらいの時間がかかるんでしょうね」と中田。 「このサイズ(手のひらサイズ)だと6時間ぐらい。これを1日12時間ぐらいやっています。これが楽しくてしょうがない」 中田は「信じられない」という顔で和田さんを見る。 「(笑)でも中田さんも、サッカーやってるとき1日12時間ぐらいやりません?」 「いや、体力持たないですよ(笑)。でもこれ、よくずっとやってますね。何でこれをやったら楽しいと思ったんですか?」 「もともと造形的なものが好きで、彫って形を作っていく――何もないところから形を彫り出すというのが面白いんです。彫って彫って、7~8合目まで来たときの高揚感が……」
和田さんいわく、仕上げにはヤスリを使うこともあるが、なるべくナイフだけで削るようにしているとのこと。なぜなら、あまりにもキレイになりすぎるより、“手”の温もりが残る作品にしたいから。 「陶芸は人に寄り添う身近な存在だと思うんです。だから、あまりにも機械的にすぎると、心に訴えてくるものがない。必ずしも真っすぐなラインじゃなかったりしますが、人の目で見て真っすぐだったり、膨らみがあったりというのを見せていかないと」
白磁の果実、曲線と向き合う
現在、和田さんは「秋の味覚シリーズ」と題した果物の形をした水差しの制作に取り組んでいる。 リンゴやラフランスなどの形をした水差しは、従来の直線ではなく、なめらかな曲線ばかり。 そうした作品を作ることにした背景をこう語った。 「震災後、日本中が落ち込んだと思うんですが、そのなかでバカなことを一生懸命やってみようと思って作ってみたんです。自分は本当は丸いラインが好きなんですが、今までは直線にこだわってたので、この機会にちょっとやってみようかな、と。 手がかかるし、難しいんですが、こういうポップなものをやることによって、見ていただく人にも楽しみが増えればいいな」
「自分の持っているエネルギーを爆発させることで、ようやく少し、人の心に訴えかける作品ができるんじゃないかと思う」という和田さんが、次にエネルギーを爆発させるものは何だろうか。 これからの作品も目が離せない。