静謐な美しさを感じる漆器「漆職人 北原久」/長野県塩尻市

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様々な漆の性質。

木曽は漆芸品の一大産地。今回訪れた漆芸作家の北原久さんは、漆問屋に丁稚奉公するという形で、漆の世界に入ったという。丁稚奉公の約10年間は職人として働き、その後、独立してぽつぽつと自分の作品も作るようになった。現在では作品の美しさが評判を呼び、多くの賞を受賞されている。

工房では、漆の様々な性質についてお話を伺うことができた。陶器の表面に漆を塗ることはできるのかという中田の問いかけに、素焼きの陶器には塗ることができると話してくださった北原さん。
「漆は、吸い込む土には塗れるんですよ。釉薬を塗ったものはだめです。でも、これは漆を使って自分の徳利を修理しているんですよ。」そう言って出していただいたのは、陶器の徳利。欠けてしまった部分に、地の粉(じのこ)を混ぜた漆を塗って、形を整えたものだった。

「漆は、たとえ少し傷がついても、その部分をきれいに研いでまた上から塗り直せば一生使えるものです。下地漆がきちんと塗られていれば、より長持ちする。現在は洗剤がありますから、やわらかい布に洗剤をつけて洗って、水を拭き取るだけで手入れは簡単にできます。」そう話してくださった。

毎日塗り重ねた漆を彫る「堆朱彫」

北原さんの作る作品のなかに、「堆朱彫」というものがある。普通、漆は何かに塗るものなのだが、この堆朱彫というのは、漆そのもので厚みをつけ、彫刻を施すという技法。つまり、漆を幾重にも塗り重ねて厚みを出すのだ。
毎日塗り重ねても、1㎝の厚みを出すのにかかる時間はなんと4年!気が遠くなるほどの時と根気がいる作業だ。中田が見せていただいたのは、この技法で作られた彩りの鮮やかな香合。 朱、青、白、黒が密に重なり、艶やかな質感が見た目にも新しい。年月をかけて、何色もの色の漆を重ねたからこそできる、独特の表現なのだ。

漆は、物を密着させる目的で使用することもでき、木地と塗り方の技法によって様々な工芸品にもなる。そして北原さんの「堆朱彫」のように、漆のみで表現される美しい作品たち。漆の魅力を知る、またひとつ貴重な技術を拝見させていただくことができた。

ACCESS

北原漆工房 北原久
長野県塩尻市木曽平沢2425-6
URL https://www.kitahara-urushi.com/
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