より良い酒造りを求めて泉ヶ岳へ
勝山酒造創業は江戸時代の1688年、仙台藩の御酒御用酒屋として拝命して以来、仙台伊達御用蔵に相応しい銘酒を醸してきた。10年前には街中から自然豊かな泉ヶ岳のふもとに移設。十二代目蔵元の伊澤平藏さんはその理由を、「より良い酒を造るには新しい設備と新しい蔵が必要だった」と振り返った。この辺りは水田が広がる穀倉地帯であり、「昔からお水が美味しいといわれてきた一帯」と伊澤さん。泉ケ岳から湧き出る水は、長い年月をかけて柔らかく綺麗な軟水となって、勝山の仕込み水となる。
勝山は一週間に一本の仕込み
一般的には酒蔵は一週間に7本の仕込みを行うが、勝山では一週間に仕込むのは1本だけだ。「良い酒を造るには、我々が納得できる精緻な造りをすることが第一。しかし、前の蔵では日仕舞(ひじまい)でやらざるを得なく、良い酒を造るには難しいと判断した」と伊澤さん。日仕舞(ひじまい)とは、1日1本ずつ醪(もろみ)のタンクを仕込むこと。
今は、一週間に一本の仕込みなので、「このペースに慣れてくると、それがとても良い酒を生み出すことが分かる。時間をかけて徹底して造り込み、納得して次の仕事ができる。トータルで良い酒が出来上がる」と伊澤さんは話してくれた。
滑らかでしっかりとした味わいの勝山の酒
純米吟醸 部門1位を受賞した「勝山 純米吟醸 献」は、伊澤さん曰く、「すっと入る滑らかさがあって、薄いように思えて、しっかりとした濃いうま味がある」と説明する。中田が利き酒すると、「口に含んで次第にうま味が上がり、最後にすっときれる感覚がある」と味の印象を語った。料理と調和を奏でる食中酒として追求してきた勝山。ゲストプレゼンターの日本料理「龍吟」の山本征治シェフは「米のきれいさが伝わってくる味わい。このお酒は白身の魚の脂が薄い時に相性がよいと思う」と語った。