青森を見下ろす岩木山神社
弘前市の北西部にある岩木山。青森県最高峰の標高1625メートル。日本百名山にも選ばれている山だ。その南東麓にあるのが岩木山神社。お岩木さま、お山さまなどと呼ばれ人々に親しまれてきた。創建はいまから約1250年前の780年。それを800年に当時の征夷大将軍であった坂上田村麻呂が再建し、別に山麓十腰内の里に下居宮を建立して、山頂を奥宮と称した。江戸時代には津軽藩主、津軽為信などにより大造営が行われ、日本の北門鎮護の名社として、農業・漁業・商工業・医薬・交通関係、とりわけ開運招福の神として、厚く崇敬されてきた。
岩木山そのものが神様
神社の入口に立つ。鳥居の向こうには、どっしりと岩木山がそびえる。その姿は勇壮でもあり、やはり心がしんと静まる風景でもある。「この風景が御神体なんです。山そのものを神様として祀っているんです」と語る。
奥宮は岩木山の山頂付近にあり、神社の参道は岩木山の登山道のひとつともなっている。国の重要無形民俗文化財に指定されている「お山参拝」は、五穀豊穣の感謝と祈願をこめて参道を奥宮に向けて登山するものだ。
一礼してその参道を中田も登る。雪の季節には参道の両脇にどっかりと雪が降り積もるそうだ。岩木山を見上げながらまっすぐな参道を行くと、朱が鮮やかな楼門にあたり、そこを抜けると拝殿がある。
お山参拝の唱文
広い社殿の畳の上に正座をする。それだけで静謐な気分になる。その後、礼拝をしてお言葉をいただいた。社殿のすみに掲げてある26文字の文言に目が行く。それは、山にお参りする修験者が口にする唱文だという。先ほど述べた「お山参拝」でも、笛や太鼓のお囃子に合わせ賑々しく唱和しながら登るのだという。特別にご唱和いただいた。その声を聴きながら、岩木山神社から奥宮まで数時間を大勢の参拝者が口々に唱えて登る姿を想像する。
社殿をあとにして参道を戻る。最後にもう一度岩木山を仰ぎ見る。鳥居の周りには緑の木々。そしてその奥には悠然と構える岩木山。自然と調和した神聖な風景が