平安時代から続くマタギ
雪の降るなか、山へ分けいる。もちろん、十分な用意をしてだ。何の用意かというと”マタギ”の用意だ。マタギは、東北地方や北海道において、狩猟を専業としてしていた人たちのことを指す。特に有名なのが秋田県の阿仁マタギだ。今回は現役のマタギで、マタギ学校講師もしていた鈴木英雄さんにナビゲートしていただき、山に入ることになった。猟をするのにはもちろん許可がいる。鈴木さんによれば、現在猟友会に登録しているのは40名程度だという。狩りは11月15日に解禁され、2月15日まで行うことが可能だという。ただし、熊は冬眠してしまうので、熊を狩るには12月半ばまでが限界だそう。それ以降の狩りはウサギなどほかの動物を狩る。そのほか、駆除活動として狩りに出ることもあるそうだ。
マタギと雪はつきもの
鈴木さんは9代目のマタギ。家には古くから伝わる道具も残っているという。取材当日は雪が降っていた。「マタギと雪はつきもの」だと鈴木さんはいう。雪が降ったら熊が歩いた跡がわかるのだという。「中田さんを待っていたように雪が降りだしたんだよね」と鈴木さんは笑う。
山を歩く。狩り自体は2時間程度だというが、狩場までが長い。朝方に山に入り、夕方まで山を歩くのだという。山に入るときに必ず持っていくのが”もち”。固くならずに、携行食としては最適なのだそうだ。歩きながら中田が狩りは食べるためだけにするのかと聞くと、そのほかに皮や内蔵などを売ることで収入を得ているのだと鈴木さんは話をしてくれた。熊の胆という薬があるように、胃は薬になったりもする。
熊汁をごちそうになる
すべての工程についていくことはできなかったので、山をひと回りしたところで終了。そこで待っていたのは熊汁。味噌で煮た熊の肉。「全然くさくない」と中田が言うように、秋田の熊は独特の臭みがあまりないそうだ。冬眠前だから脂がのっていると鈴木さんがいうように、しっかりと旨味のある熊肉をいただいた。「熊で一番おいしいところは?」と聞くと「本当はホルモンなんですよ」と答えてくれた。山に持っていくというバター餅もいっしょにいただいた。これは秋田が発祥だそうだ。これもうまい。
マタギの歴史は古く、平安時代からその存在が知られている。独特の倫理観、宗教観を持っていて、いわゆるハンターとは違う存在として知られてきた。日本独自の文化のひとつなのだ。