水田環境鑑定士とは?
取材の日はあいにくの雨。本当ならば最後の稲刈りをし、田んぼで稲を見ながらの予定だったのだが、残念ながらそれを断念しておうちでお話を聞くこととなった。
お相手は米農家であり、水田環境鑑定士という肩書きも持つ渡部浩見さん。
水田環境鑑定士というのは、米・食味鑑定士協会が定める資格。水田に生息する生物などを鑑定して、水田環境の豊かさや安全性をわれわれ一般の人間にもわかりやすく格付けして公開してくれるのが水田環境鑑定士だ。
お米に大事なのは「水」
米・食味鑑定士協会のホームページを見ると、水田環境鑑定士の説明の欄に「基本のコンセプトは『水』」と書かれている。稲を育てる上で最も大切な水を鑑定し、水田の安全性などを鑑定すると説明がある。
その言葉を証明するように、渡部さんの口からも「お米には水が大事」というお話が出た。秋田のお米は水が強みなのだという。
「ここは栗駒山系、大豪雪地帯でもある。雄物川水系の最上流に位置した湯沢市は、水がきれいなことと、寒暖の差が大きい気候風土がお米づくりに合っているんです。秋田の米のコンクールでも、ここ湯沢管内から出品されるお米が各種コンクールで入賞されている方が多く、非常にレベルの高い生産者がおる所です」それと、やっぱり土作り。有機肥料を使用し、ミネラルや微量要素の入った資材を使用し、微生物を増やすことが大事だとも語る。
ご飯のプロ「調理炊飯鑑定士」
おいしくお米を炊くのにもやはり水が大事なのだとも教えてくれた。
「冷たい水から研ぐのがコツ。ミネラルウォーターの軟水でもいいでしょう。特に一番最初の研ぎが大事なんです。すばやくササッと研いで捨てる。そうしないと、糠臭さやゴミをお米が吸ってしまうから。それから研ぎ方は指とぎでね。」また、近年、猛暑の年に収穫されたお米は、玄米の表層が薄くなっているので、精米する段階で削りすぎには細心の注意を払うのだという。
実は渡部さんは調理炊飯鑑定士の資格も取得した「ご飯」のプロでもあるのだ。現在は東京オリンピックに向けてお寿司にあったお米、ご飯を作ろうと研究を重ねているところでもあるそうだ。
秋田で一番のお米を作る農家
そしてもちろん、お米を作る農家でもある。あきたこまちを中心に、ゆめおばこやひとめぼれなどを作っている。いまもっとも懸念しているのが温暖化。おいしいお米には寒暖の差がなくてはいけないというのだが、温暖化のせいでそれが薄れているのだという。それでも日夜おいしいお米作りの研究に余念がない。 取材のあと、渡部さんからお手紙が届いた。そこには「第15回 米・食味分析鑑定コンクールの『都道府県代表お米選手権部門』において、特別優秀賞を受賞しました」と書かれていた。つまり、秋田県で1番おいしいお米に選ばれたということだ。
秋田の水が作り出す豊かな水田。温暖化に負けないおいしいお米。それを最高の炊き方で食べる。最高のひとときだ。