九州を代表する伝統工芸「薩摩錫器」/鹿児島県鹿児島市

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錫鉱山と薩摩錫器の歴史

薩摩錫器(さつますずき)は、江戸時代に郊外で錫鉱山が発見されたことから作られたのが始まりとされる。当時、金銀とならぶ価値の高い金属であった錫は、薩摩藩の大きな財源となり、高級品として扱われていたが、生産量の増加から次第に一般家庭でも使われるようになっていった。

第一次大戦後の軍備抑制などの影響から縮小を余儀なくされ一時旧山となるものの、「錫山工業組合」が生産を続け、薩摩の特産品として全国に名を馳せるほどに。現在、鹿児島では錫は産出されなくなったが、鹿児島の伝統工芸品として、その技法が伝えられている。

緻密な削りや磨きが美しい「薩摩錫器」

薩摩錫器の特長は、熱伝導率が高く保冷や保温性に優れていること、分子が粗く不純物を吸収する特性があるため、水を浄化する作用があること。また、金に続いてイオン効果が大きいので、味をまろやかにするともいわれている。錫で作られた花器は花を長持ちさせ、茶壷は香りが長くもつ、酒器は暖かくも冷たくも良く、酒の味をひきたてるということで昔から食器などに広く用いられてきた。

錫はやわらかく、加工がしやすい。溶解した錫を型に流しこみ、冷え固まったところで施盤で削る、その全てが手作業で作られる。緻密な削り面、磨きと深いエッチングを施す作業はかなりの鍛錬と集中力が必要とされるが、そこから生まれる上品な色合いや光沢、柔らかな手触りが、愛され続ける理由のひとつといえるだろう。現在では、薩摩錫器の技を伝える店もわずか3軒しかないが、中田もそのひとつ「浅田錫器」を訪ね、この道40年になる2代目、浅田慎太郎さんに手ほどきを受けた。

ACCESS

浅田錫器
鹿児島県鹿児島市樋之口町6-19
URL http://www.synapse.ne.jp/~suzuhiko/
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