直島で行われるアートプロジェクト
瀬戸内海に浮かぶ小さな離島、直島では、ベネッセホールディングスと直島福武美術館財団によって、現代アートに関わるさまざまな活動が展開されている。
「家プロジェクト」もその一環。ほかに「地中美術館」や「ベネッセハウス」も運営されており(それぞれの詳細は各項目を参照)、それらを総称して「ベネッセアートサイト直島」という。
家プロジェクトとは、直島の本村地区を中心に展開されている常設アートプロジェクトのこと。
村の中の空家×アート
このプロジェクトを分かりやすくイメージしてもらうために、あなたが村の一員だったと仮定してみよう。ここには古くから住む人々ばかり。あなたも共同体のなかに溶け込んで暮らしている。ところが、村に空き家ができた。家プロジェクトは、そんな空き家になった民家をそのまま利用して、アーティストたちが作品をつくるという取り組み。
つまり、民家そのものがアート作品なのである。これまで長い時間かけて営まれてきた生活感、積み重なった時間や記憶、そんなものも作品のなかに取り込みながら、作品そのものが共同体の一員のように存在している。
空き家がアート作品になったからといって、あなたの生活は変わらない。とはいっても、観光客が来て道を尋ねられれば答えるし、作品の管理を手伝ったりもする。そう、ここでは生活のなかに恒常的にアートが維持されているのである。
直島の町並みとアート作品が共存する
だから、家プロジェクトの作品名は「角屋」「南寺」「護王神社」「碁会所」「はいしゃ」など、地図に載っているような名前ばかりだ。200年ほど前に建てられた建物を漆喰や本瓦を使って復元した作品(「角屋」)や、歯科医院兼住居だった建物に彫刻的なスタイルや絵画的なスタイルを盛り込んだ作品(「はいしゃ」)もあれば、江戸時代から地元で祀られている神社は、改築のタイミングにあわせて本殿にあがる階段をガラス製にし、そこから地下室に光が流れるように設計された(「護王神社」)。どの作品も伝統のなかに斬新さが散りばめられていて圧倒される。
外観は古い民家のままに見える作品も多く、街の景観と一体化していて、ちょっと見ただけでは古い街並みそのもの。
しかし、一歩作品のなかに入れば、そこには思いもよらない世界が待っている。そのギャップがまた斬新なのだ。