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時代とともに消滅した黒牛潟の名を酒に
「名手(なて)酒造」のある黒江という街は、かつては美しい入り江に囲まれた街だった。そこには、名前のとおり、黒くて大きな岩があったという。
波に見え隠れするその姿が黒い牛のようにも見えたため、黒牛潟と呼ばれたその光景は、古く万葉集にも詠われている。
黒江を囲んでいた入り江は大昔の地震で姿を消し、現在は運河となって残るのみになったが、その黒牛という名前は、酒の名前となって受け継がれている。それが、名手酒造で造られている純米地酒、「黒牛」である。
戦国時代の雑賀の名を受け継ぐ「九重雑賀」/和歌山県岩出市 – NIHONMONO
雑賀の名を冠するお酒 「雑賀孫市」(さいかまごいち)――。雑賀孫市は、戦国時代に鉄砲の扱いにかけては右に出るも
平和への願いが生んだ酒蔵「平和酒造」/和歌山県海南市 – NIHONMONO
「平和な時代」で酒造りをしたい 「平和酒造」の創業は1928年。その名前に「平和」の文字が入っているのには理由
特徴は「黒牛の水」
蔵にある井戸の水は、和歌山名水50選に選ばれる中言(なかごと)神社の「黒牛の水」と同じ水脈だ。その清く澄んだ水で醸す純米酒は、熟成した深みのある香りとまろやかな舌触りが特徴。
湧水と国産米を生かし純米酒造りにこだわった結果、その出荷数は全体の95%までに上るという。また「親しみの持てる銘酒(純米酒)づくり」という蔵の方針から、地元県内への出荷が6割以上なのだ。
名手酒造を知ってもらうために
名手酒造では「酒づくり資料館 温故伝承館」を開設、伝統的な酒造りを伝える器具を収集し公開している。酒造りの歴史に触れることができ、美味しいお酒についてより親しむことができる、お勧めスポットだ。