蓋麹にこだわるお酒
平成11年から、生産量のすべてが「純米」となった森喜酒造場。つくる酒はすべて手づくりで、「蓋麹」という手間ひまかかる麹を使って醸している。
蓋麹とは、伝統的な麹の精製法のひとつで、蒸した米を麹蓋と呼ばれる小さな箱に入れて作る方法。小分けにすることにより、温度調節や酸素供給などがしやすいため、より良質な麹を作り上げることができる。
しかし、大きな台に米を広げて麹を作る床麹法や機械精製法など、一度に大量の麹を生産する方法とは違い、人の力と時間が必要だ。実際、一般には蓋麹法は、主に吟醸酒かそれ以上の高級酒を作る際にしか使われない。しかし、森喜酒造場はこの麹にこだわる。時間を惜しまずに、徹底的に手をかけることで、香りは控えめで、深みのある酸をもったしっかりとした味の酒が造れるからだ。
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人気作家との交流秘話
そのこだわりが生んだ酒のひとつが「るみ子の酒」という名の酒。命名者は、マンガ「夏子の酒」の作者・尾瀬あきら氏である。
現在、専務兼麹作り責任者の森るみ子さんが「夏子の酒」に感動して、蔵元で育った幼少のころからの体験や現在造っている酒のことなどを綴った手紙を出したところ、尾瀬氏から返事があった。
「夏子の酒」第五巻のあとがきで尾瀬氏が、ネーミングについて「『夏子の酒』をもじったものではないか…という意見もありましたが、これほど的確なネーミングは他に見当たりませんでした」と書いているように、るみ子さんのこだわりあってこその酒である。
ちなみにその情熱に魅せられた尾瀬氏は、ラベルのイラストまでも描いてくれた。
酒へのこだわりが、うまい酒を造る。当然のことなのかもしれないが、それをはっきりと味で示してくれるのが、ここ森喜酒造場である。
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