NIHONMONO「にほん」の「ほんもの」を巡る旅マガジン

色彩と文様の天才・芹沢銈介に触れられる「静岡市立芹沢銈介美術館」

色彩と文様の天才・芹沢銈介に触れられる「静岡市立芹沢銈介美術館」

静岡市の登呂公園にある「静岡市立芹沢銈介美術館」は、染色工芸家で人間国宝の芹沢銈介が郷里の静岡市に寄贈した作品と、彼が集めた世界の工芸品のコレクションを楽しむことができる美術館だ。

芹沢銈介の作品は、特徴的な文字や大胆な絵柄で、いまでも多くのファンがいるという。日本国内のみならず、海外にも多くのファンがいるという染色工芸家・芹沢銈介をご存じだろうか。彼の名は知らなくても彼が手掛けたデザインには、どこかで触れたことがあるはずだ。

柳宗悦(やなぎ むねよし)や濱田庄司(はまだ しょうじ)らとともに大正から昭和初期の民藝運動の中心となった彼は、日常的な暮らしの中で使われてきた手仕事の日用品の中に「用の美」を見出し、日本の風景や動植物、文字などをモチーフにしながらどこかモダンさを感じさせる作風で知られている。従来の染色の枠組みにとらわれない新鮮な色彩や温かみのある文様は多くの方に愛好され、昭和31(1956)年には「型絵染」で重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された。

「収蔵品は、芹沢作品約800点とコレクション約4500点です。彼が沖縄の紅型やアイヌ文化に影響を受けたことはよく知られていますが、それ以外にも世界中に目を向けていました。とても鋭く強い眼差しを持っていた方だと思います」(白鳥誠一郎館長)

展示されている作品は、彼の作品を代表する仕事の一つといわれる屏風や着物、帯やのれんなど染色工芸家らしい作品から、マッチ箱やカレンダー、包装紙、本の装丁、日本酒のラベルなど多岐にわたり、「これも彼の作品だったのか」という発見も少なくない。
「色彩や構図がいま見てもすごく新鮮だし、ダイナミック。彼が現代のものをデザインしたらどんなふうになっていたんだろうと思ってしまいますね」(中田)
その幅広い作品群を見ると、芹沢という人物がいまでいうところのグラフィックデザイナーとしても活躍していたことがよくわかる。

柳宗悦も感服したという世界の工芸品・民芸品のコレクションも見事。彼は自らの収集を「もうひとつの創造」と呼んだというが、現在ほど簡単には海外に行けなかった時代に、よくぞここまでさまざまな国のものを集めたものだと感心せずにいられない。別棟として東京から移築した「芹沢銈介の家」を訪ねると、往時の染色家の生活の一端にふれることができる。作品の構想を練ったり、型紙を彫ったりした創作の場でもあるが、こちらにも家具・木工・染色・陶磁器・玩具といった彼が収集した世界中の工芸品があふれている。

美術館は公園内に位置することから、自然に溶け込めるようにと石や木、水という天然素材を選んで構成されており、作品鑑賞にふさわしく、ゆったりとした豊かな時間が流れている。決して派手な観光地ではないが、展示替えやイベントに合わせて再び訪ねたいと思わせられる美術館だ。

ACCESS

静岡市立芹沢銈介美術館
静岡県静岡市駿河区登呂五丁目10-5
TEL 054-282-5522
URL https://www.seribi.jp/