世界が認めたニット「佐藤繊維株式会社」

世界が認めたニット
「佐藤繊維株式会社」

実現不可能といわれたモヘア

今から4年前の2009年。アメリカ史上初の黒人大統領の誕生に世界中が注目するなか、オバマ大統領の就任式が行われた。その隣に立つファーストレディのミッシェル夫人が身につけていたのがニナリッチのモヘアのカーディガン。実はその糸は、メイド・イン・ヤマガタのものだったのだ。
実現不可能とまで言われていた、極細のモヘアを生み出したのは佐藤繊維という会社。お話を聞いた佐藤正樹社長は「トレンドを追いかける仕事より、オリジナルのものを山形から世界に出したい。言われたものを作るより、自分の作りたいものを作ろうと思った」と語る。その熱意が生み出した極細のモヘアが世界のトップブランドの目にとまり、一躍注目を集めることとなったのだ。

素材はファッションの土台

佐藤繊維は1932年に設立された紡績ニット会社。佐藤さんのお祖父さんが工業化し、お父さんの代からニットの製造を始めたのだという。ただし、時代とともに安い糸や安い製品が入り、主に中国製品に市場を奪われていくという現実があった。そこで自分たち独自のものを作らないといけないという思いを強くしたそうだ。

佐藤さんは世界中の職人のもとを訪ねた。また、世界中の農家を訪ねた。そんなことを重ねているうちにある紡績工場の責任者が「うちは単に糸を作っているんじゃない。ファッションの基礎を作っているんだ」と話してくれたという。その“熱意”こそが佐藤さんの心をうったのだ。それからさまざまな原料を試し機械を改良し試行錯誤を繰り返した。そうして生まれたのが世界から注目を集める、メイド・イン・ヤマガタの糸なのだ。


モノづくりは現場から

最初は“夢”だったというイタリアの糸の展示会にも出展。ダメかなと思った時もあったそうだが、驚くようなブランドから声をかけてもらった。それが最初に紹介したニナ・リッチだった。それからは数々のトップブランドから「サトウセンイの糸がほしい」と声をかけられ、一気に人気が広まり佐藤繊維の糸は世界に認められる糸になった。

佐藤さんは自身がデザインするブランドも手がける。「面白いのは、素材や機械のことを知っていると、いろいろな発想が出てくるんです。つまり最終形態から考えるモノづくりではなく、素材を見つめることで、これだったらこんなものを作れるんじゃないかというインスピレーションがあるんです」と佐藤さんは話す。世界のデザイナーにも“素材からの発想”をもったモノづくりをする人がたくさんいるという。

「では逆に、そのデザインの経験から糸をどのようなものにするか考えることもありますか?」との中田の質問には「もちろん」と答える。「モノづくりは常に現場で“触れる”ことから生まれるんです。それはデザインも素材も同じだと思います」。
世界で認められるメイド・イン・ヤマガタは、常に現場を大事にしているからこそ生まれるのだ。

ACCESS

佐藤繊維株式会社
山形県寒河江市元町1-19-1
URL http://www.satoseni.com/