きのこから復興を支える「きのこのSATO 佐藤博文」

きのこから復興を支える
「きのこのSATO 佐藤博文」

しっかりした香りのきのこ

中田が生産所に伺ったときは、出荷前のしいたけがずらりと並べられていた。そのどれもがしっかりとした形と大きさをしていて、力強い姿をしていた。「生で食べるのがおいしい」と教えてくれたのは、きのこのSATOの社長である佐藤博文さん。きのこのSATOのしいたけの特徴は大きくて強いきのこであること。
その理由は育て方にある。普通、しいたけ栽培は身体を大きくするために水をたくさんかけて栽培する。しかし佐藤さんによれば「それでは水っぽく、べちゃっとした食感になってしまう」のだという。佐藤さんは土間に水をはり、気化した水分をしいたけがほしい分だけ吸い込むように育てているのだ。しいたけ自身に水量を決めてもらうわけだから、理想的な水分量で成長してくれる。また菌床には地元の三陸海岸でとれたわかめの茎やカキの殻など栄養分の豊富なものをふんだんに使っているので肉厚の香りの高いしいたけが育つ。
「手間をかける分、成長は遅くなるんですが、しっかりとした味わいが楽しめるしいたけに育ってくれる」と佐藤さんは話す。

大きくて強いきくらげ

また、きのこのSATOの商品でも有名なのが「生きくらげ」。国内で生きくらげを量販店に流通させようとしたのはきのこのSATOが初めてだというのだ。これまで生きくらげが流通しなかった理由は、賞味期限の問題が大きい。乾燥させていない生の状態では、ほとんどのものが3日程度で食べられなくなってしまうという。だが、きのこのSATOのきくらげは2週間程度保管できるという。それは海から吹く潮風のおかげ。本来塩分はきくらげの成長を止める作用をしてしまうのだが、佐藤さんの畑では常に塩分を含んだ潮風が吹いているので、きくらげに免疫ができているそうだ。それで痛みにくい強いきくらげに育っているのだという。その利点を生かし、全国に生きくらげを出荷している。

きのこのSATOの今昔

きのこのSATOのきのこたちは、味や香りが評価されて全国のレストランなどから注文がひきもきらないが、会社があるのは陸前高田市。東日本大震災で大きな津波被害を受けた地域だ。沿岸部にあったきくらげハウス7棟や本社事務所は津波により全壊し、建物の基礎が残るのみとなった。しかし、しいたけハウスときくらげの培養棟は少し離れた山の上にあり、津波はギリギリのところで到達しなかったという。
一部の施設が被害をまぬがれたきのこのSATO。佐藤さんは長く続くことになる復興の雇用対策に、きのこを通して雇用を生み出す計画を練っており、実際に動き出してもいる。きのこから復興を目指す。地域の復興とともに、おいしいきのこの名産地を目指していきたいと語ってくれた。

ACCESS

きのこのSATO株式会社
岩手県陸前高田市高田町字本宿87-1
URL http://www.kinoko-no-sato.com/