壮大な建造物「東大寺」
座高14.9m、見上げた先にやっと顔が見える大仏さま。日本でもっとも有名な奈良の大仏さま、「毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)」を本尊とするのが東大寺だ。東大寺の起源である金鍾寺(こんしゅじ)が建てられたのは728年。聖武天皇が大仏造立の詔(みことのり:天皇からの命令を伝える書)を743年に発し、大仏が完成して開眼供養会が行われたのは752年。日本に仏教が伝来してから200年目にあたる年だったという。
東大寺が建設された時代は、天平文化華やかなころ。天平文化とは奈良時代に栄えた仏教文化だ。政治制度も唐からの影響を色濃く受けつつも、日本独自の法や文化を打ち立てようとした時代である。この時代の粋を集めた東大寺は、1998年に古都奈良の文化財の一部として、ユネスコの世界遺産に登録されている。
絶えることのない伝統行事
また、東大寺には、現代まで1250有余年も続く行事がある。「修二会(しゅにえ)」や「お水取り」とも呼ばれるが正式には、「十一面悔過法(じゅういちめんけかほう)」という法会。
東大寺、二月堂の本尊である十一面観世音菩薩に、全ての人々の日ごろの行いを僧侶が代わって懺悔(ざんげ)することで、国の安定や人々の幸せを願う行事とされている。選ばれた11名の練行衆が二月堂に向かう、その足元を照らすのは大きな松明の炎。3月1日から14日まで、毎日、二月堂には「お松明」があげられる。また、12日には、若狭井(わかさい)という井戸で観音さまにお供えする「お香水(おこうずい)」を汲みあげる行も行われる。
中田もこの「修二会」を見学させていただいた。早春の厳かな空気のなか、松明の明かりが溢れんばかりに揺れていた。