ダイナミックな器を作る「輪積」の技法
日本六大古窯のひとつに数えられている「越前焼」。釉薬(ゆうやく)を使わずに焼くことで、実直で朴訥(ぼくとつ)な味わい深い風合いがあらわれる。発祥は平安時代といわれるほどに長い歴史を持つ越前焼は、甕(みか)やつぼなどの台所用品を作り続けてきた。江戸時代に茶が大流行したときも、ほかの窯元はこぞって茶器の製造を行ったのに、越前焼はそちらにシフトせず、一貫して生活用品のみを作った。
現在80基ほどあるといわれている越前焼の窯元のなかで、今回お伺いした「たいら窯」は、平安時代から伝わる「輪積」(わづみ)という技法をいまの世に伝える唯一の窯元。輪積とは、「越前大ねじがめ立技法」とも呼ばれ、ろくろを使わず、ひも状にした槌を積み重ねるように巻き上げて器を作る技法だ。ろくろを使わないので、自らが器の周りを回りながら、積み上げていった土を引き伸ばしていく。この製法はアフリカで焼き物に用いられている方法と同じなのだとか。ダイナミックで自然な風合いが器に乗り移る。
自然に生まれる風合いを求める越前焼
伝承者の藤田重良右衛門(じゅうろうえもん)さんが作る器は、手にしっくり収まって、土味のいい正統派。伝統を継承しながら、現代の生活にマッチした器の方向性も模索しつつ、製作に勤しんでいる。
輪積を用いる大きな器の製作は時代の変化によって機会が減ってしまい、普段はろくろを使った陶器を主に製作されている。窯にくべるのは、くぬぎの木。松に比べて、灰が重たいために、越前焼の特徴である土の表情の変化が大きいという。器は、丸6日間焼きこむ。
「窯の中で器をいじめて、いじめ貫いて、そしておもしろい表情を出すんです。」
藤田さんは、自然に生まれる風合いが面白いのだと話してくださった。
福井県の風土が生んだ越前焼。手で触れると、心がほっこり温かくなる、そんな親しみを感じる器だ。