朴木地屋からはじまった
もともとは江戸時代後期に輪島漆器の製造所として、スタートした工房。
昭和初期に桐本久幸さんが、木彫り職人を集めて朴木地屋(ほおきじや)を始め、それ以降、漆器はもちろんのこと、漆を配した家具や建築内装材などを作り続けている。
朴木地屋とは、木地をそのまま生かした器やお椀などを作る職人のこと。「桐本木工所」の作品も、自然の風合いを生かした漆器が目立つ。
この日、中田はスプーンに漆を塗る作業を体験させていただいた。木地の形は、手によく馴染む柔らかな曲線だ。
暮らしに合った輪島漆器
三代目の桐本泰一さんは、プロダクトデザインを学び、企業のオフィスプランニングを経験したのちに輪島に戻り、木地業に携わることとなった。伝統的な漆器と、現代の生活に溶け込む漆器。また、漆器の可能性を広げるための挑戦。時代のニーズを見極め、バランスを取りながら制作を行っている。
漆が今の暮らしに溶け込むように、との思いを持ち作品を作り続けている「桐本木工所」。より身近に漆を感じてもらおうと、東京の江東区に「うるしの事務室」なるものを開設。室内は一面が漆。壁も扉も天板も……。
まさに、漆とともに暮らしがある部屋だ。ここは予約をすれば誰でも見学することができる。
輪島漆器と触れ合う機会を持つこと
さらに、「うるしはともだち」のキャッチフレーズのもと、ほかの職人とともに、地元で「ギャラリーわいち」も設立した。漆器のよさ、斬新なデザイン、職人それぞれが作品にこめた思いを発表できるようにとの考えからこのギャラリーは開設された。
輪島の伝統である漆器。
職人さんたちは、つねに「暮らしのなかに」という想いを持っている。温もりのある光沢と、その光沢が長く持つ漆器は、ちょっと立ち止まって丁寧な暮らしをしたいときに、ぜひ取り入れたいアイテムだ。