夢の機械を創る、100年企業が描く農業と未来。「井関農機株式会社/株式会社ISEKI M&D」/愛媛県松山市

日本を代表する農業機械メーカーのひとつである、井関農機株式会社。創業者、井関邦三郎氏は、北宇和郡三間(みま)村(現宇和島市)生まれであり、三間はおいしい米(三間米)の産地としても知られる農村地域である。

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農家を過酷な労働から解放したい

創業者・井関邦三郎氏、誕生の地である愛媛県。松山市にある「ISEKI Dream Gallery」では、井関農機株式会社の歴史や技術を展示している。井関邦三郎氏は、幼いころから家業である農業に携わっていた。当時の農作業は重労働であり、「農家を過酷な労働から解放したい」という強い想いを抱いていたという。人の手から機械へと移り変わる時代の中で、より良いものを追求する情熱が原動力となり、1926年に松山市で「井関農具商会」を創立。最初に手がけた農機は「全自動籾すり機」だった。その後も農業の機械化と近代化に貢献し、戦後の食料増産や高度経済成長を支える企業へと発展していく。

農業の未来を動かす、松山発のモノづくり

1936年に、松山市に工場を設立。戦後の食料増産、高度経済成長を支える、農業の機械化・近代化に貢献する数々の農業機械を開発・生産してきた。1978年には松山工場にて大型トラクタ生産を開始。長い歴史を持つ同工場は、現在も「株式会社ISEKI M&D」としてISEKIグループの農業機械の製造部門を担っている。ISEKIグループにおける「スマート農業」「環境保全型農業」といった取り組みにおいて、製造面から支える、モノづくりの中核拠点だ。

「人の手作業から機械化へと変えていくなかで、本当に役立つ機械を作りたい。“ええもんを作ろう”という創業者の理念を、今も受け継いでいます」と、株式会社ISEKI M&D 代表取締役社長の酒井正弘さんは話す。

ISEKI M&Dで製造する農業機械は小規模農地向けから130馬力の高出力トラクタまで幅広く、海外で活用される芝刈機や、雑草抑制・農薬肥料散布・土壌水分保持などを行う乗用管理機など、多様な製品を手掛ける。部品加工から塗装、組み立てまで社内で一貫して行う体制を整えているため、多品種少量の製品に素早く対応でき、農家にとって使いやすく、手に取りやすい製品づくりにつながっている。

スマート農業と野菜作機械化一貫体系

農業を取り巻く現実は厳しい。従事者の高齢化や後継者不足で、人手はどんどん減少している。収穫や植え付け、管理といった作業は、季節や天候に合わせて短期間で集中して行う必要があるため、限られた人手ではとても追いつかない。こうした現場で求められているのは、少ない労力で確実に収量を確保できる農業機械の技術だ。

ISEKIは、農業の効率化と環境保全を両立させる「スマート農業」に注力している。ITやセンサー、GPS、ロボットといった最新技術を活用し、作物の状態やほ場の条件に応じた作業を可能にすることで、少ない人手でも高い生産性を実現する。

スマート農業技術を搭載したトラクタやロボットトラクタの開発・生産も行う。たとえば、GPSを利用した位置測位により、トラクタはほ場内での直進走行をアシストできる。これは作業者がステアリングで細かく舵を切る必要がなくなるため、疲労を軽減できるというものだ。また、ロボットトラクタは有人監視のもと、人と協調して作業を行うことで、作業効率の向上にも貢献している。

ほかにも、ほ場内の状態に応じて肥料量を調整する「可変施肥技術」を2015年に開発。肥料の無駄を抑えながら、生育のばらつきを少なくし、品質や収量の安定につなげるなど、環境負荷の軽減と生産性向上の両立を目指している。

 1990年頃には機械化の進展により、稲作における労働時間が1960年の4分の1となる一方で、野菜作に関しても省力化のニーズが高まる。田植機・コンバイン・乾燥機など、機械化一貫体系が進んでいる稲作に比べると、当時の野菜作は機械化が遅れており、軽労化・省力化が求められてきた。ISEKIは、全自動野菜移植機「ナウエルPV101」の商品化に始まり、「野菜作機械化一貫体系」に力を入れてきた企業でもある。

実は野菜作りは、地域ごとに作業のやり方が大きく異なるという特徴があるそうだ。たとえばネギの場合、一口に「長ネギ」と言っても、地域ごとに品種や栽培方法が異なる。畝(うね)の幅や植え付けの間隔にも地域性があり、ISEKIではそれぞれの地域に合わせて、畝幅や植え付け間隔を調整できる機械を開発している。

 さらに、だいこん・玉ねぎ・キャベツ・ブロッコリー・サトイモ・ニンジン・レタス・枝豆・ネギ・かんしょなど、幅広い作物に対応できる機械や資材をそろえ、「野菜作機械化一貫体系」を確立。苗の育成から植え付け、管理、収穫、選別まで、野菜作り全体の工程を一貫して機械化できる体制を整えている。これにより、多品種少量の生産や地域ごとの栽培条件の違いにも柔軟に対応でき、少人数でも効率的かつ品質の安定した農作業が可能になる。

創業100年、技術と人で未来の農業をつなぐ

現場の解決につながる技術開発を積み重ね、ISEKIはトラクタや田植機、コンバインなど農業機械の開発に関わる技術をはじめ、約2,200件の特許権を保有している 。培ってきた技術力が、スマート農業の進化を支え、現場の農業をより確実で、より負担の少ないものに変えている。

ISEKI M&Dで製造されている新型機種もそのひとつ。GPSなどのデジタル技術を活用したスマート農業にも取り組んでいる。こうした技術は、長年の経験で培われてきた農作業のノウハウをサポートするものだ。例えば、熟練者が感覚で行っていた正確な作業を機械が補助することで、経験の浅い作業者でも一定の品質で作業しやすくなる。人から人へ受け継がれてきた農業技術を、デジタルの力で次世代へつないでいくことで、担い手不足の解消や持続可能な農業の実現を支えている。 

農業現場の人手の減少や、気候変動の影響もあり、農業現場の人手は減少。効率化と環境への配慮は欠かせない。国の「みどりの食料システム戦略」も追い風となり、省力化や有機農業など、持続可能な農業への転換が求められている。

ISEKIは2026年に創立100年を迎え、長年の技術と経験を誇る企業としてこの課題に向き合う。大型・先端・畑作・環境対応の農業機械を開発し、省力化と環境保全を両立。電動化をはじめとする環境対応技術を拡充し、高品質な農機を通じて生産性の高い持続可能な農業を後押しする。

さらに次世代の技術者育成にも力を注ぐ。設計や製造、最新技術に触れる実践の場で課題解決力や判断力を磨き、長年培われた技術や知恵を学ぶ姿勢も大切にしている。こうして育まれた人と技術の力が、農業の効率化や環境配慮に直結し、より持続可能で豊かな農業を支えていく。技術と人が紡ぐものづくりは、これからも農業に新しい可能性を届けるだろう。

ACCESS

井関農機株式会社/株式会社ISEKI M&D
愛媛県松山市馬木町700番地
TEL 089-978-1211
URL https://www.iseki.co.jp/
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