ゆうだい21は、国立大学大学初の良食味水稲品種で宇都宮大学生まれのオリジナル米。「その姿は、雄大にして壮麗」というキャッチコピーさながらの雄大な姿を持ち、品種登録以来、毎年数多くの品評会で優秀な成績をおさめているお米だ。
国立大学法人初の新品種
ゆうだい21が誕生したのは宇都宮大学農学部の附属農場。
宇都宮市内にあるキャンパスから南東へ約13㎞程離れた栃木県真岡市の農村地帯にあり、学生たちの移動も苦にならない場所だ。
東京ドーム約21個分に値する総面積101haほどの広大な敷地を有し、そこでは、水田・普通畑・野菜畑・果樹園・施設園芸用の温室・飼料畑・放牧地などの教育や研究が行われている。
宇都宮大学農学部の前身である「宇都宮高等農林学校」は、1922年の創立。
国立大学農学部の中でも老舗であり、現在では「生物資源科学科」「応用生命化学科」「農業環境工学科」「農業経済学科」「森林科学科」の5学科で多岐に渡る教育研究がなされており、広大な農場で実践的な教育と先進的な研究を通じ、持続可能な農業と環境保全を目指し、地域社会と連携しながらグローバルな視野を持つ人材を育成している。
ゆうだい21が生まれた奇跡
「生まれたことが奇跡」と称されるゆうだい21。
その理由は、ゆうだい21の基になった株が偶然発見されたものだったからだ。
1990年、当時農学部の助教授だった前田忠信名誉教授が、試験栽培を行っていた附属農場の試験田にひと株だけ、とりわけ大きな稲穂を発見。このひと株を20年の歳月をかけて栽培研究と、選抜・固定を行い、2010年に新たな品種として登録を行った。
何千株もの中に、少しだけ大きく実った稲穂、そして、それを見逃さなかった前田名誉教授との偶然の出会い。これが20年後、全国の米品評会を席巻することになるとは、一体誰が想像できただろうか。
ちなみに、品種登録される前は「U21L」と系統名で呼ばれていたゆうだい21。「U」は宇都宮大学のU、「L」は大きい穂を示す「LARGE」に由来している。
この系統名を元に、はじめて見つけた稲穂の大きさと附属農場の雄大さ、そして宇都宮大学の呼称である「うだい」と「雄大」を結びつけ、「ゆうだい21」という名が付けられた。
「米・食味分析鑑定コンクール」で頭角を現す
品種登録後、日本で一番規模の大きい米の品評会とされる「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」の特別優秀賞に、ゆうだい21がはじめて登場したのが2013年に開催された第15回のこと。それを皮切りに、第16回のコンクールにて、国際総合部門の金賞にノミネート、第23回には国際総合部門金賞5名、特別優秀賞4名が同品種を出品し受賞。
その後も、第24回には国際総合部門金賞4名、特別優秀賞3名、第25回にいたっては、国際総合部門で金賞18名中10名、特別優秀賞は24名中10名と、賞の約半数以上をゆうだい21が占めるなど、その評判は年々高まっている。
ゆうだい21が頭角を現す以前は入賞する米の半数以上をコシヒカリが占めていたが、わずか10年でコンクールの状況は一変した。
冷めてもおいしい、ゆうだい21の食味
品評会を席巻するゆうだい21。その食味はどのようなものか。宇都宮大学農学部・高橋行継教授によると、うま味が強くてバランスが良く、噛むほどに甘みを感じられるのが大きな特長だという。
また、炊き上がりから6時間経過しても、炊飯直後の軟らかさが保たれる。つまり、おにぎりや弁当など冷めた状態で食べる場合には、その真価が発揮されるということだ。
ゆうだい21の特徴とコシヒカリとの違い
コシヒカリと比較栽培しながら開発が進められてきたゆうだい21は、コシヒカリよりやや大粒なため、食べ応えがある。炊飯直後の粘りはコシヒカリの5.5倍もあり、古米でも粘りの低下は3割未満だという。これはコシヒカリの古米と比較すると、3倍以上の粘り。
これらのデータから、多くの生産者から「コシヒカリを超える品種になるのでは」と期待されている。
ゆうだい21がもつ可能性
もうひとつ、ゆうだい21の大きな強みとして、暑さに強いという特徴がある。
これは研究当初からある程度わかっていたことだったが高橋教授をはじめ、宇都宮大学農学部・長尾慶和教授らゆうだい21に関わる大学のメンバーも、実際にどこまで暑さに強いのかは把握しきれずにいた。
しかし、2023年。その年の夏は平均気温が統計開始以降最高を記録し、猛暑日地点数の積算数も2010年以降最多を更新するなど、驚くほどの猛暑が続いた。
それを乗り越えた2023年の米・食味分析鑑定コンクールで、ゆうだい21はコシヒカリを上回る入賞数を記録。
暑さに弱いコシヒカリに対して、ゆうだい21は猛暑を乗り越えた上で、食味や特色をしっかりと出すことができた。これにより、相当な暑さにも対応しうる力があるということを実証できた同品種。今後も温暖化による気温上昇が予想される日本に於いて、より普及していく可能性を秘めているのだ。
ゆうだい21が向かう先
これほどまでに、強みが多く、将来性が高いゆうだい21だが、栽培方法が難しい特徴がある。
その理由は、ゆうだい21の稲は背丈が高く、昨今の天候によっては強くなびくことがある。茎が折れることはないが、生育が旺盛になり、稲が倒れると収穫作業が困難になり、収穫量が減ったり、品質の低下に繋がってしまう。栽培が難しいとなると生産量も増えにくい。そのため、環境や天候に合わせたより良い栽培方法を確立するため、宇都宮大学では栽培研究を継続して行っている。
数々のコンクールで高評価を獲得するゆうだい21の次なるフェーズは、コシヒカリや、つや姫のようなおいしいブランド米として、市場流通のシェアを拡大し、ビジネスモデルとしていくこと。そのためにも課題をクリアし生産量を増やすことで、誰でも手に入りやすく、全国の食卓で気軽に食べられる品種にする。宇都宮大学の挑戦はこれからも続いていく。