破れない和紙「西ノ内和紙 菊池正気」/茨城県常陸大宮市

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水につけても字がにじまない紙。

西ノ内和紙は350年の歴史を持つ、伝統的な和紙。江戸時代には水戸藩の専売品として、広く愛好された。ちなみに水戸黄門つまり徳川光圀が編纂した『大日本史』も、この西ノ内和紙が使われたという。  特徴は、強い紙ということ。だから障子、唐傘、提灯は当然だが、売掛帳にもよく使われたという。破れにくいのと、書いた字がにじまないのだという。菊池さんによれば「水につけてもにじまない」のだそう。「だから問屋が火事になったら、水の中に売掛帳を放り込んだそうですよ。そうすれば記録がなくならないからって」。それほど、強い紙なのだ。

強さを活かした商品。

強いというお話をしているときに、菊池さんが一枚の和紙を持ってきた。何をするのかと思うといきなり水につけて、雑巾のように絞った。あっけにとられる中田。手渡された紙を、左右に勢いよく引っ張ってみてと言う。切れない!? でも、何度もやっても切れる様子がない。パンパンと音をたてて水しぶきをあげ、まるで布を引っ張っているようだ。 これは繊維を縦に配置した紙と横に配置した紙の二枚をこんにゃく糊で接着したから。縦と横が重なることで強靭な紙ができあがる。それを利用してこちらでは、のれんやクッションカバーなどの商品を作っている。これがダントツで人気商品だという。強さは現代でも西ノ内和紙の長所として存在しているのだ。

自分の内側からのやる気。

お話を伺った菊池正気さんは、和紙職人として超がつくほどの一流職人。今回の旅でお話を伺った紙布作家の桜井貞子も、菊池さんの和紙でないと糸を紡ぐことができないというほど。強さと繊細さを兼ね備えた和紙を漉けるのは菊池さんだけだと桜井さんは言う。
だが、学校を出たあとはサラリーマン生活をしていたという。家業の紙屋を継ぐつもりはなかった。でもしばらくしてサラリーマンが合わずに帰ってきて、職人になった。ただし、そこからはつらかったという。なかなか売れなかったそうだ。10年ぐらいしてやっと売れるようになり、店を出してお客さんにいろいろ教えられた。そうして職人の自分は作られたと話してくれた。

現在は息子さんとともに紙漉きをしているが、息子さんに自分の仕事を継げと言ったことは一度もないという。それでも息子さんはサラリーマン生活の後に、自ら紙漉きの仕事をしたいと申し出たそうだ。 「誰かにやれと言われてやるのと、自分から興味や意欲をもってやるのではまったく違う。最後はやる気ですよ。」

ACCESS

西ノ内和紙 紙のさと 菊池正気
茨城県常陸大宮市舟生90
URL http://www.e-consul.info/iba/hom/kns/
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