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「鋳込み」という手法。
普通、陶芸というと、土をこね、ろくろを回してという姿を想像するかもしれない。しかし、長江さんは「鋳込み」という手法を使う作家。だから作陶の風景も少し違う。 鋳込みとは、石膏で作った型に、珪酸ソーダなどをまぜて液状にした土を流し込んで成形をする焼物。明治期になってヨーロッパから輸入された技術で、日本陶芸においては比較的新しい技法だ。 手やろくろで成形するものとは違って、ゆがみのない製品を大量に生産することが可能なため、現在では多くの窯に用いられている。長江さんの生家も、もともと鋳込みで器を作っている窯元だった。
変形しやすい特徴を生かす。
しかし、長江さんはその大量生産で、薄くてゆがみのないものだけを目指すという姿勢に疑問を抱いた。そこで考えた末、焼くときに変形しやすいという磁器の特徴をいかし、独特な曲線、薄くて繊細なフォルムの磁器を作り出した。それが、現在の長江さんの作風だ。作品はスイス国際磁器トリアンナーレで大賞を受賞するなど、国際的にも高い評価を得ている。
アートとしての作品だけでなく、日常で使える器も作り続けている。凛とした姿、涼しげな色彩の白磁は、食卓に置いてあったら、間違いなく目を引く作品ばかり。余分な装飾のない繊細な器は、料理そのものも引き立ててくれそうだ。