函館から美味しさを全国へ届けるために。マルヒラ川村水産はこだわり続ける

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異国情緒を醸す街並み、函館山の美しい夜景、なんと言っても暖流と寒流が交差する豊富な漁場を有する函館。函館が誇る選りすぐりの魚を求めて、日本各地の一流シェフが頼るのが「マルヒラ川村水産」だ。顧客の要望に応えるべく、新幹線輸送も開始した2代目の川村淳也さん。函館から高品質かつフレッシュな魚を各地に届ける川村さんが秘める想いとは。


激流育ちのスルメイカから毛ガニ、ブリまで



北海道の南の端にあり、津軽海峡、太平洋、噴火湾(内浦湾)の海の恵みを受ける港町、函館。古くは北前船の寄港地であり、ペリーの入港をきっかけに開港した貿易港としての歩みを持つことでも知られる。眼前の津軽海峡には対馬海流(暖流)、親潮(寒流)が流れ込んでぶつかり、湾入した海岸線は「巴」を思わせる複雑な形状を織りなす。そのため函館には四季折々、多種多様な魚種が集まってくるのだ。


「函館名物と言えば、北海道では『真イカ』と呼ばれる、スルメイカです。九州の対⾺海流と太平洋側から⼊ってくる⿊潮、それに北の⽅から流れてくる千島海流が津軽海峡でぶつかり激流が生まれる。地球上でも有数の荒波なのだとか。その激流で育まれた良質なプランクトンを食べ、イカが揉まれてくる。激流に揉まれたイカはとても甘みがあり、歯ごたえも抜群によくて、うまいんです」


地元函館の名産のイカについて、美味しさをつぶさに教えてくれたマルヒラ川村水産の川村淳也さん。川村さんが2代目を務めるマルヒラ川村水産は、函館市水産物地方卸売市場のすぐそばにある創業50年を超える鮮魚店だ。町の魚屋さんとしてスタートした同店は現在、レストランなどの飲食店に向けた卸売りを中心に函館発の新鮮な魚介類を全国に届けている。


北海道という立地ながら比較的南にあることもあり、冷たい水域に住む魚はもちろん、暖かいエリアの魚までさまざまな顔ぶれが楽しめるのが函館の特徴だと川村さんは続ける。


毛ガニボタンえびえぞアワビなど甲殻類・貝類にはじまり、おおよその⿂は獲れますね。寒い地方でしか獲れなかったニシンも揚がっています。海水温の上昇のニュースが伝わるようになった18年前くらいの秋口からはイカを追いかけてブリなども入ってくるようになりました」と川村さん。


寒ブリならぬ、北海道の秋の時期のブリは京都の割烹店からフレンチまで多くのシェフから引き合いがたえないという。


「寒ブリの濃厚な、フルボディみたいな脂のりではなくて、もう少しライトなんだけれど旨みが残る感じのブリ。皆さん、1度使ったら再度依頼してくださる。ただ、ブリによって個体差があるので、私たちが目で見て見極めます」


函館で獲れたばかりのブリは死後硬直前の状態にある。死後硬直から少し寝かせると魚の体内から旨み成分が分泌される。新鮮な状態では味わえない旨みだ。この旨みを最も感じられる時間や歯ごたえのバランスは魚によっても異なる。川村水産では、その頃合いまでを見込んで輸送時間を手配しているのだ。


「例えば函館の市場で競り落とした魚を豊洲市場に運び、そこで仲買人からシェフが買うとなると時間がかかってしまいますよね。ですから私たちは、朝どれの魚を新幹線に乗せて直接首都圏などのシェフのもとに、その日のうちに運んでいます


航空便とも併用し、朝函館で獲れた魚が都内のレストランのディナーで楽しめる。レストランを訪れる人たちにとって、この上なく幸せな食事になることは間違いないだろう。


魚屋さんが「目利き」としてフランス大使館へ



川村さんの目利きによる選りすぐりのフレッシュな「函館の幸」の評価は高く、食のプロたちからの信頼も厚い。三つ星レストランや有名店のシェフから直々にリクエストを受けることも多いという。


「和食やフレンチのお客様が多いですが、ジャンルは幅広いですね。イタリアンや中華のシェフからもオーダーが入ります。ホテルなら1カ月のメニューをもとに注文を受けますし、いい魚が入った時にお客様に電話するパターンもあります。さばいてからお送りすることもあれば、若い料理人さんの練習も兼ねたいからと魚をそのままお届けすることも。お客様のニーズに合わせてお届けします。」


日本を代表するシェフたちへと魚を届ける川村水産だが、もともとは「町のお魚屋さん」として、一般家庭で消費する魚を販売していたという。


「小さな間口のところで家族で昔ながらの魚屋さんを営んでいました。時代の流れと共に、値段の手頃な魚を売るスーパーに押されるようになってしまって…」 より良い品質を求めるお客様との出会いを求め料理の見本市などにも積極的に足を運んだ。そして少しずつ、飲食店のシェフたちから信頼を集めることに成功した。


さらに川村水産の今後を変える、大きな出会いが重なる。フランス大使館に招聘(しょうへい)されることになり、世界にその名を知られるシェフたちとの出会いの機会に恵まれた。

この出会いが契機となり、目利きとしてメディアに注目されることも増えていく。この出会いから川村さんの目利きとしての実績を買われ、数々の有名レストランとの出会いに発展していったという。


厳選素材を求めるシェフたちが絶賛する魚介



川村さんの「選魚眼」を通して、港町・函館の⿂のポテンシャルは全国に知られるようになってきた。「東京のお店からの問い合わせが圧倒的に増えましたね」と川村さんは言う。そう話すとおり、銀座で2つ星を獲得する料理店の他、有名ホテルも顧客に名を連ねる。また⼤阪の2つ星フレンチ、北海道ではイタリアンなど、エリア、ジャンルを問わずオーダーが舞い込む。


有名店のシェフは当然ながら日々、忙しい。川村さんは多忙な顧客の負担にならないよう、先手を打ってメニューなどに関する提案をするよう意識していると話す。顧客が求めるよりもさらに上の提案をすべく、日々腕を磨く。


「調理に関してはプロではありませんが、獲った魚を美味しく食べる処理方法や素材選びには磨きをかけてきました。ですので、お客様をイメージして提供方法や素材の内容、加工の方法などを前もってお話しすることはあります。例えば瞬間冷凍した魚に関しても、冷蔵庫で氷温解凍するのがベストなんです。ご存じの方ばかりとは限りませんのでお知らせするようにしています。皆さん、世界中からいろんなものを取り寄せて使ってらっしゃるプロであり、価値を理解されている方々なので、こちらも力が入りますよ」と川村さん。


先ほどの「秋ブリ」に関しても、当初は難色を示したシェフも少なくなかったという。


「皆さん最初は『えー』っておっしゃるんだけれど、だまされたと思って使って、とおすすめして(笑)。すると、皆さんこぞって「いいね」って気に入ってくれました。函館の地の利に恵まれた場所のありがたみを感じています」


顧客に商品を送る前に、水槽で一度魚を休ませるのも一番いい状態を保ちたいからという。 「今の海水温は約14℃ぐらいで、底のほうはおよそ9℃。市場の水槽は水温が高めのことが多いので、商品を競り落としたらここで海と同じ状態に近づけ、魚を休ませます。冬には水温を下げたり、酸素を多くしたりと魚に負担をかけないよう気をつけています」


サステナブルシーフードの理念を未来世代につないでいく



数々の有名店のシェフとつきあうようになって、「本物」が何か、理解するすごさを知ったという川村さん。自身が大事にしてきた魚介類たちの素晴らしさにあらためて気づかされたと話す。


「きちんとしたお店のシェフは本当に素材を⼀品⼀品吟味して使ってらっしゃる。ただ残念ながら、一般的な流通の世界ではまず値段ありきで、これほど素晴らしい魚介類の価値、質に気づいてもらえないことが多いように感じます。もちろん、私たちの啓発不足の面もあるでしょう。」


未来に向けて魚の良さを伝え、ずっと海の幸を食べ続けられるようにするためにも「サステナブルシーフード」の理念を日本人皆で共有していくべきなのではないかと提案する。


「私の考えるサステナブルシーフードっていうのは、まず皆が問題意識を持つことです。魚の数が少なくなっているからこそ、いかに価値を持たせていかなきゃならないのかをあらためて見つめ直す必要があると思うんです。何でもかんでも量販店で⼤量に扱うのではなく、きちんとした漁法のもと、価値ある形で買い付け、そのバリューを理解する⽅々へ渡して⾏くようにしたい。」


サステナブルシーフードの考え方を体系化し、理念を共有するNPOなどと協力し、

これからの⿂⾷の⽂化を未来の子どもたちに向けて伝えて行く活動に力を入れたいと語る。


「本物の魚の価値を知り、理解する⼈たちが多く集まるための一翼を担っていくのが私の夢でもあります」。


函館の自然な魚が味わえる幸せをかみしめ、自らのテリトリーである魚を通じて本物の価値を的確に伝えたい。目利きとして魚の未来をつなぐため、川村さんは今朝も市場に向かう。


ACCESS

株式会社マルヒラ川村水産
〒 040-0037北海道函館市旭町6-3
TEL 0138-22-8880
URL https://maruhira-kawamura.net/