ホテルマンから農家への転進
富士山のふもとに「有機農園・ビオファームまつき」はある。2009年にオープンした「レストラン ビオス」でランチをいただきながら、オーナーの松木一浩さんにお話を聞いた。 松木さんは、もともとホテル、レストランの給仕を務めていた。ホテル学校を卒業して、フランスに渡り、ニッコー・ド・パリに勤務。帰国後は銀座などの一流フランス料理店で働き、恵比寿の「タイユヴァン・ロブション」では第一給仕長を務めた。ところが1999年、突然農業の道に進むことを決意。 中田が「ホテルマンから農業って、かなり大きな方向転換ですよね」と言うと、松木さんは転職の理由をこう答えた。 「レストランって夜の職業じゃないですか。そのとき、日が高いうちに働いて、日が沈んだら帰る、そういうある意味、人間的な生活がしたいなって思ったんです。それで選んだのが畑だったんです。」
全国から注文が絶たない松木さんがつくる野菜
農業研修を終えた後、現在の富士宮市の畑で有機野菜の栽培を始めた。最初は「自給自足ぐらいの規模を考えていた」というが、現在は3ヘクタールの土地で約60品目の野菜を育てている。土と気候に合った松木さんの野菜は、濃密で味わい深い。その風味が人気を呼び、全国から注文が集まっている。 松木さんは著書も多く、講演などの仕事も精力的にこなしている。また「野菜塾」なるものも開催し、野菜のことをもっと知ってもらおうと尽力している。けれども、自ら「農人」というように、太陽の明るいうちのほとんどを畑で過すと話してくださった。 畑は季節によって彩りが変わるもの。「レストランビオス」では、松木さんの育てた季節の野菜を味わうことができるほか、お肉やお魚、乳製品も、近隣の生産者から仕入れたこだわりの味覚を堪能することができる。