和牛を知り尽くした職人ならではの定番洋食・洋食つばき/岐阜県岐阜市

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完全予約制レストラン「洋食つばき」

岐阜県南部に位置する岐阜市。玄関口であるJR岐阜駅周辺には高層ビルが並ぶ。古くは斎藤道三が礎を築き、娘の帰蝶の夫となった織田信長が楽市楽座を開くなどしたエリアだ。近年は名古屋市まで電車で約20分という立地もあり、ベッドタウン化が進行。多くのサラリーマンや学生が、隣接する愛知県の企業や大学へ通い、休日は多くの人が郊外の大型ショッピングセンターで過ごすのが一般的と、典型的な現代の地方都市の顔を見せる。

一方、全国で5本の指に入るほど市民の外食費が高く、人口1,000人当たりの飲食店数も国内トップクラスと、外食の需要が高いことはあまり知られていない。そうした環境において、県内外から訪れる客をうならすのが、完全予約制のレストラン「洋食つばき」だ。 

情緒あふれる古民家で味わう洋食

JR岐阜駅からは車で20分ほど北上した静かな山のふもとにある。築150年を超える古民家ならではの情緒があふれ、手入れの行き届いた庭には小川のせせらぎが心地よく響き、高級旅館を彷彿させる佇まいである。門からお店の入り口までを歩くだけで懐石料理を食べに来たのではと錯覚させる程。店内は和風モダンな造りで玄関では靴を脱ぐスタイル。 

そして木のぬくもりが感じられるテーブルに敷かれた和紙のランチョンマットにはお箸がそえられている。料理が載せられるプレートはどれも白地に金縁のみのシンプルなデザインで統一。いわゆる昔ながらの誰もが想像する「品のよい洋食」の風貌だ。どこまでも和風の空間で頂く洋食である。メニューはコース料理を中心にアラカルトの用意もあり、料理に合わせたワインの品ぞろえも豊富だ。 

和牛のスペシャリストだからできること

この店は岐阜県揖斐郡(いびぐん)に本社を置き、肉をメインとした飲食店を展開する株式会社田中屋フードサービスが運営している店の一つで、「食べログ 洋食 百名店2022」で全国2位に選ばれるなど食通の間で評判だ。株式会社田中屋フードサービスはこのほかにも2020年には東京の一等地・銀座6丁目に「肉屋 田中」をオープン。その日最高の銘柄肉をメインに使ったおまかせコース1本で勝負する本格肉割烹として話題になった。代表の田中覚さんは、自らを肉師と称す正に和牛のスペシャリスト。牛馬の仲介をする馬喰(ばくろう)の祖父、精肉店を営む父のもと、10歳で初めて包丁を握り、料理人を志す。25歳で焼肉店を開業し、東京、愛知、岐阜、滋賀に店舗を拡大。2019年に名古屋市の店舗「肉屋雪月花(にくやせつげっか)」にてミシュランプレートを獲得したことで一躍その名を全国区に。業界内の評価も高い。 

「洋食つばき」が人気を博したのは、ステーキやハンバーグなどクラシカルな洋食メニューにA5ランクの銘柄牛のみを用いたこと。多くの人に長年愛されるメニューの素材を見直すことで、味のアップデートを図ったのだ。飛騨牛、松坂牛、三河牛、近江牛、神戸牛…誰よりも多くの和牛と向き合い、その魅力をどう引き出すか長年研鑽を積んできたからこそ、理想の味から逆算して、どの和牛のどの部位をどのように使えばいいのかを知り、それを体現できる技を持つ。

グルマンの心と意を掴む”公式”

店内には使用している牛肉の銘柄、個体識別番号が掲示されていることからもそのこだわり様がうかがえる。ブランド和牛×定番洋食=“和牛洋食”。誰もが思いつきそうな公式のようにも見えるが、その解は道を突き詰め慧眼を得たものにしか見えないものだ。だからこそ、多くのグルマンの心と胃をぐっと掴んで離さない。懐かしさただようメニューの中に凛と佇む肉師としてのプライドは、新しい時代の日本の洋食の扉を開き、人々が永く後世に受け継ぎたい新たなジャンルを作るのかもしれない。是非一度訪ねてみてほしい一軒だ。 

ACCESS

洋食つばき
岐阜県岐阜市打越59-2 
TEL 058-297-1122
URL https://yoshokutubaki.jp/
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