400年以上高知で受け継がれてきた伝統工芸「土佐刃物」を作る工房。
和包丁の9割は大阪・堺産とされていますが、実は その刃物の6~7割は高知産。
「土佐包丁の価値をもっと高めたい」と、日々技術を磨いています。
400年以上受け継がれてきた歴史ある包丁「土佐刃物」
高知の伝統工芸「土佐刃物」は、当時の領主であった長宗我部元親が豊臣秀吉の小田原征伐に参戦した際、刀鍛冶職を連れ帰ったことがきっかけで始まったといわれている。このように土佐刃物の歴史は古く、現在まで長い間大切に受け継がれ続けている。
日本でも屈指の研ぎ師である、土佐包丁工房 田所刃物の田所真琴さんも、最初は須崎市の「刃付屋」で修行を重ねたという。
「最初は見ているだけで触らせてももらえない。負けず嫌いで悔しいから自分も技術を身につけようと思うようになり、いつの間にか夢中になっていました。頑張れば頑張るだけ技術が身につくので、勉強や遊びよりもずっと楽しかったですね」
堺の包丁技術を取り入れて新たな土佐刃物へ
地元で17年間修行をした田所さんは、土佐刃物の価値をさらに高めるため、全国各地の刃物の産地を巡った。そこで出会ったのが、包丁の本場、大阪の堺にいる現在の師匠だった。
「高知でやってきたことは何だったんだろうっていうくらい、これまでの技術や知識が通じませんでした。同じ作業をするとして、高知が10工程だとしたら、師匠のところは20とか30とか。とにかく手間ひまをかけて研いでいく。この技術を学ばなきゃダメだと心から思いました」
研ぎの作業は、“粗研ぎ”、“中研ぎ”、“仕上げ研ぎ”と流れる。堺で衝撃を受けた田所さんは、土佐刃物に新たな風を吹き込むべく、一日を要するほど時間をかけて丁寧に研ぎあげていく。
「手に伝わってくる振動、音、火花の色、すべてを感じながら砥いでいきます。経験を重ねていくことでその感覚が身につくようになるんです」
包丁の切れ味が料理をおいしくする
丁寧な仕事で出来上がった田所さんの包丁は、美しく、切れ味も抜群だ。
「よく切れる包丁は、魚や肉、野菜などに圧力をかけないので、料理もおいしく仕上がるんです」
実際に切れにくい包丁で食材を切った場合には雑味や苦みが増し、旨味が落ちてしまうこともある。切れ味が良い包丁は見た目にも美しいだけではなく、料理をおいしく変えるほどの大きな力を持っている。
日本の和包丁の生産の9割は堺産ということになっているが、実はそのうち7割は高知で作られているという。
「いつまでも堺の“下請け”をやっているわけにはいかない。なんとか土佐包丁の価値を高めていかなければと思っています」
田所さんは土佐包丁の価値を高めるべく、今日も切れ味を追求している。
日本の包丁は和食の料理人だけではなく世界からも注目を集めていて、フレンチのシェフが日本までわざわざ包丁を買いに来ることもあるほどです。いい包丁を使えば、それだけで料理はおいしくなります。ぜひ1度切れ味を試してみてください。
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