相澤酒造の仕込み水。
栃木県佐野市に蔵を構える相澤酒造は、安政元年・1854年に創業した栃木県内でも老舗の酒造だ。現在8代目の蔵元は相澤祥子さん、そして杜氏は娘の相澤晶子さんが務めている。
中田が伺ったのは寒さ厳しい冬の日、ちょうど蔵では寒造りの真っ最中だった。蒸米の作業を見学しながら、今年の米の状態やこれからの細かな調整、変化について説明をいただく。
「こちらのお水はどんな水質なんですか?」と中田。
「水はやや硬水です、発酵が進みやすい水質です」と晶子さん。相澤酒造では敷地内の井戸から秋山川伏流水を汲み上げ、仕込み水として使用している。この清冽で豊かな水から爽快な味わいの酒が生まれるのだ。
酒造りを見極めるために。
麹室では純米吟醸用の製麹の作業を見学させていただいた。作業を行う床(とこ)の上いっぱいに広げた蒸米に向かい、腕と蒸米までの高さは一定に保ち、手に持った缶に入った麹菌を振りかけていく。
「場合によって、米に水分が多いと感じたら、腕の高さを変えます。麹菌を振り切る、振り切らない、蒸かしあがったときの状態を見て決めています。」
「毎年毎年、どんな出来上がりにしたいか想像しながら、感覚を見極めています。多くの量を造ることができないので、再現性を持たせるのが難しいです。」と晶子さん。
相澤酒造の看板商品は「愛乃澤」「愛乃澤純」「旭城」。酒米“栃木県産五百万石”、“栃木県産ひとごこち”による酒造りは、まさに栃木の酒の味を醸し出している。栃木県清酒鑑評会では、県産米純米酒部門で知事賞受賞を受賞するなど、その名は広く知られところとなり、旨みや口当たりのバランスの良い酒として人気も高い。
その味は、杜氏・晶子さんのきめ細やかな酒造りによって左右される。常に注意深く見極める感覚を持つこと、このすべての配慮は酒造りへの情熱に他ならないのだ。