盆栽という芸術を育て、盆栽作家を育てる
埼玉県さいたま市には”盆栽村”という地名が残っている。それほど埼玉県は盆栽と深い関係にある。その埼玉で数々の盆栽を手がけ、世界的な盆栽作家として知られる木村正彦さん。内閣総理大臣賞受賞をはじめとする多数の輝かしい受賞歴を持ち、現在は、国内はもとより海外でも講師として招聘され、いくつも講演を行なっている。木村さんから盆栽について学んだ人々は世界各地に広がり、独自の作家活動を行っているのだ。
木村さんの見た目は真面目な生粋の職人といったふう。けれども、彼の作る盆栽は芸術的で、木村さんをアーティストと紹介する人も少なくない。早速作品を拝見すると「この鉢の中に、まるで壮大な自然の景があるようですね。」と関心しきりの中田だった。
盆栽のルーツはどこから
ところで、盆栽の起源はどこにあるのだろう。知っていそうで知らない疑問。単刀直入に中田が木村さんに質問すると、「盆景という文化が中国にありました」と答えが返ってきた。
「山に生えている樹を気に入って、器に入れて持って帰って飾ったっていうのが起源でしょうね。数千年昔に遡ると言われています。そこから朝鮮半島を経由して5、600年前に日本に渡って来たといわれています。そして日本人の手により現在まで発展し、日本独自の文化として確立しています。」
続いて中田からの質問攻め。「樹は自然から採ってくるものなんですか?」
「そのとおりです。自然の断崖絶壁に自生しているような樹を山から採ってくる。まったく肥料や水もないところで育っているからもともと品種としては特別なもので、あまり大きく育たないものばかりです」
これには中田も驚いていた。人間が大きく“させない”のではなく、もともと特殊な樹を鉢に移し替えているものだったのだ。
年月とともに成長する盆栽作品
採ってきた樹を鉢に移し替えれば、盆栽という定義には入る。けれどもそれでは作品にはならない。形を整え、枝を剪定し、育てていくことで作品になっていくのだ。あるひとつの経年変化を見せてもらった。中田を含め、スタッフ一同から「おお!」という声が挙がった。
”豊かな”自然が鉢のなかで成長していくのがよくわかった。木村さんによれば、宮内庁には徳川家光が愛でた盆栽があるという。つまり約400年生き続けているというわけだ。それは例外にしても数100年は生きるという。年とともに変化、成長していくのが盆栽なのだ。
木村さんは、ただ樹を植えるだけでなく、幹を削り形を変えたり、石を起きそこに樹を生えさせたり、盆栽のなかに”世界”を創りだす。その人工的な世界のなかに、成長する自然が存在する。盆栽の魅力はそのふたつの力が合わさるところにあるのかもしれない。