土づくりは“菌”の力の見せどころ。
「土のなかの菌のバランスで、植物の育ち具合が全然違うんです」
そう語る、有機農業歴20年以上の斉藤完一さん。
有機農業界では、その名を知らぬ人はいないと言われるほど有名だ。
微生物に活発に働いてもらうため、斉藤さんの畑では有機米のぬかや落ち葉、牛糞など独自配合の完熟堆肥を使って土づくりをしている。
微生物によって土が耕されるため、トラクターなどを入れなくても土が柔らかい。
畑に棒を刺すと、なんと2m近くもするすると入ってしまうほどふっくらなのだ。
その様子を見せてもらうと、中田も「すごいな!!」と大感動。
そろそろ秋の訪れが感じられる斉藤さんの畑では、さつまいも、かぼちゃ、空芯菜、おくら、にんじんなどがすくすくと育っていた。
「夏場は、虫には逆らえません。でも根菜は土のなかで育つから、葉っぱの部分が食われてしまっても大丈夫。葉っぱを切ることで新しい芽を出してやれば、ミネラルと生命力が豊かな野菜に育つ。野菜の根が張るから、農薬がなくても丈夫に育つんです」
サトイモの畑を見ると、大きな葉っぱに大きなイモムシが。
「あー、本当だ。普通にイモムシが食べてますね」
野菜の味は、地力によって変化する
「普通、農家といえば追肥をやって育てますが、うちはそれもしない。窒素分が多いと、ひょろひょろの野菜になりますから。うちは、あくまでも地力を高めるという考えでやっています」
「そのためには、特にこういうやり方だと、自分で販売までしっかりやらないとなかなか難しいですよね」
「そうですね。私のところには、東京から消費者の方々がバスでやって来て、一緒に野菜収穫体験やバーベキューなんかのイベントをやったりしています。東京だとビルに隠れて見えない夕日も、ここだときれいに見えますよ」
斉藤さんの作る野菜のなかでも、注目株が「ひとみ五寸」というにんじんだ。
とてもやわらかく流通過程で割れやすいため、取扱いが難しく、「市場に出回らない」レアなにんじんである。
まるでフルーツのようなさっぱりとした甘さが特徴で、ひとみ五寸だけの100%ジュースにするのもおすすめだという。
本物の素材の味がする斉藤さんの畑の野菜は、どれも味がしっかりしていて、生でそのまま食べても酒のつまみになりそうなほど。
これが、土をこよなく愛する斉藤さんならではの野菜の味なのだ。