故郷の里山を9万9千本の桜でいっぱいにして、子どもたちに残そう——。いわき市で今、とてつもなく壮大な計画が進められている。その名も「いわき万本桜(まんぼんざくら)プロジェクト」。世界で活躍するアーティストも名を連ねるプロジェクトの舞台を訪ねた。 |
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見渡す限りの桜の里へ 250年のプロジェクトいわきの人々の切なる思いが集まり、「いわき万本桜プロジェクト」がスタートしたのは、東日本大震災から2カ月後のことだった。活動の中心を担うのは、志賀忠重(しが・ただしげ)さん。今年、開高健ノンフィクション賞を受賞した川内有緒(かわうち・ありお)さんの「空をゆく巨人」のなかに、「いわきのすごいおっちゃん」として登場する人物だ。 目指す場所は、田んぼを見下ろす高台にあった。そこから先にはまるで龍のように、全長約160メートルの木の回廊が上へ上へと伸びている。入口の看板には「いわき回廊美術館」の文字。壁の展示物に見入っていた中田英寿さんが、1枚の写真の前で足を止めた。 |
中国・福建(ふっけん)省出身の現代美術家、蔡國強。いわきを第二のふるさとと語り、現在はニューヨークを拠点に世界中で創作活動を続けている。 |
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「桜を植樹するには、元々ある木を伐採する必要があるんです。震災前は、間伐材が一反歩あたり5〜6万円で売れたんですが、震災後は、値崩れしてしまって。赤字だよと言ったら、それならその木材で建てましょうと。手入れも楽だからということで、回廊形式になりました」 |
桜は年間400〜500本を植樹しており、現在までに4000本を数える。とはいえ、まだ目標の25分の1。このペースでは、約200〜250年はかかるでしょうねと志賀さんは笑う。 「将来的にはね。目の前の田んぼを取り囲むように、桜でいっぱいにしたいと思っているんです」 志賀さんの指差す先を見て、「最高の景色ですね」と中田さんが言う。 「ずっと進化し続ける美術館というのも面白いですし、多くの人の思いが詰まった場所だけに、もっとたくさんの人に知ってもらえる仕組みを考えてみるのはどうでしょう?」 「田んぼが美しい場所だから、秋の収穫祭を開催したらどうでしょうか」 囲炉裏(いろり)を囲んで、ふたりの作戦会議は日が暮れるまで続いた。 |
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●いわき回廊美術館 ●いわき万本桜プロジェクト ●いわき万本桜info(twitter) |
ACCESS
- いわき回廊美術館
- 福島県いわき市平中神谷地曾作7
- URL https://www.mansaku99.com/home