もうひとつの日本の姿
軽井沢駅より車で約15分。浅間山麓の緑豊な谷あいに佇むは、「星のや軽井沢」。まず訪れた客人の目を引くのは、美しく水面に建ち並ぶ「集落」の風景だ。敷地の中央を流れる湯川にせりだすように建てられた離れ家風の客室は、「水波の部屋」。お部屋に居ながら周辺の自然をたっぷりと満喫できるようにと考えられた客室には、窓辺にゆったりとしたソファーが設えられ、夜には水面に浮かぶ水行灯の光を眺めることもできる。
広大な敷地は曲がりくねった路地によって繋がり、高台には「山路地の部屋」、落ち着いた山あいには坪庭と持つ「庭路地の部屋」といった客室が点在している。建築のコンセプトである「集落」はもともと日本人の暮らしていた生活環境のひとつ。その環境を現代のライフスタイルに合わせた形に進化することで、心地よく宿泊・滞在できる空間へ造りあげた「もうひとつの日本」の姿なのだ。
温泉とともに楽しむ滞在プラン。
この軽井沢星野に温泉を採掘したのは初代経営者である星野国次氏だった。古くから湯川の途中には温かいお湯の湧く場所がありこの湯川に臨む星野温泉は、明治時代、赤岩鉱泉という名で、入湯すると皮膚が美しく甦ることから「美肌の湯」として親しまれていた。湯治客が立ち寄っていたことから、温泉の採掘を行い、軽井沢の名湯地として開発が始まったとされている。
「星のや軽井沢」の入浴施設は「星野温泉 トンボの湯」と「メディテイションバス」。源泉掛け流しの「トンボ温泉」は大浴場と四季折々の風景を楽しめる露天風呂でゆったりと過す「美肌の湯」。自然体の自分に戻る為のお風呂として考えられた、五感を研ぎ澄ます温泉「メディテイションバス」は、温度を低めに設定してあるため、瞑想入浴を行うことを推奨しているお風呂だ。
また、創立時から人と自然の調和を大切に考える「星のや軽井沢」では、様々な滞在プログラムを提案している。そのひとつ「エコツアー」はバードウォッングや天体観測を行い、自然散策を楽しむことができるプラン。さらには「バックカントリースキー」や本格的な登山で忘我し極上のスパで弛緩を体験する「忘我の逗留」といったプランも、季節ごとに企画されている。
日本酒の力、「吟醸逗留」
そして、ゆっくりと心身ともに癒されたい方に向けて水辺に浮かぶトリートメントルームでのスパメニューも充実だ。中田が実際に体験させていただいたのは、「吟醸逗留」という日本酒を使ったちょっと珍しいプラン。
お部屋では四季の季節酒を頂き、お食事は日本料理と地酒のマリアージュを楽しむ。そして、日本酒をふんだんに使った檜風呂に浸かり、酒粕成分オイルを使用したトリートメントマッサージを受けることができるというもの。日本酒に含まれる成分にはアンチエイジング効果があり、「飲むマッサージ」と呼ばれる血行促進効果を、全身で体感することができるプランなのだ。これまでに数々の酒造を巡ってきた中田にとっても、また新たな日本酒の効果を知る体験であった。
「星のや軽井沢」は、日本人が古くから生活を営んできた、里山、川、棚田、集落といった環境や固有の文化を現代建築・ライフスタイルと融合させることで、新しい滞在型温泉旅館のスタイルを生み出している。客人が日常の喧騒から離れ、自然に溶け込んだ特別な時間を楽しむことができるお宿なのだ。