国産ウイスキーの始発点
伊那地方の中央アルプス駒ケ岳山麓にあるマルス駒ヶ岳蒸留所。国産ウイスキーの父として知られる竹鶴政孝。彼をイギリスへと送り出したのが、マルスウイスキーの生みの親である岩井喜一郎だ。岩井は帰国した竹鶴のレポートを元にスコットランドの単式蒸留釜を再現した。その味が今のマルスウイスキーの元になっている。今ではウイスキーのほかワインやリキュールなど幅広い酒種を取り扱う。
ウイスキー熟成も樽によって違う
マルス駒ヶ岳蒸留所の所長であるブレンダーの竹平考輝さんに樽貯蔵庫を案内していただく。薄暗い貯蔵庫に足を踏み入れると、一瞬で強いウイスキーの香りに包まれる。「ワインも樽によって違いがあるがウイスキーの場合はどうか」と中田が聞くと、「ここではバーボン樽を使っている。新樽やシェリー樽もあり、バーボン樽はバニラっぽい。シェリー樽では、熟した果実やメープルシロップのような味が残る」と竹平さんは教えてくれた。シェリー樽はその昔、ウイスキーが高級酒であった時代に、一般的に飲まれていたシェリー酒の樽にウイスキーを隠した。その味が美味しかったことでシェリー樽が熟成に用いられるようになったそうだ。
ブレンドの妙技、ブレンデッドウイスキーを堪能
蒸留所で造られたウイスキーを飲み比べる。樽で熟成したウイスキーをブレンドしてつくるのがブレンデッドウイスキーだ。最初は「TWIN ALPS」度数40%のブレンデッドウイスキー。「度数は一番美味しいと感じられる数値にもっていく。ブレンダーは度数を考えながらブレンドする」と竹平さん。「最後に甘みが残る感覚がよい」と中田。次いで「岩井トラディション」度数40%を試飲。こちらは「ピリっとしている」という印象。「ウイスキーとしての骨格がはっきりしている」ので、ハイボール向きとのことだ。特別にヴィンテージの「駒ケ岳30年」を試飲させてもらうと、「複雑さが優しくて美味しい」と中田も絶賛。「時間をかけてゆっくり変化する味わいを楽しんでもらいたい」と竹平さんは話した。