桐たんすの産地として栄える加茂
もともと全国各地で生産されていた桐たんすだが、現在ではその大半は加茂およびその周辺地域で生産されている。加茂が桐たんすの産地として栄えたのは、盆地である周りの山にたくさんの桐があったこと、当時船による交通・運送が盛んで加茂川がその役割を担っていたというのが理由と言われている。
家具の最高級品とも言われる加茂の桐たんすを製造する有限会社茂野タンス店は、伝統の桐たんすをはじめ、桐で造られた子供向け玩具や小物トレーなど、200年以上続く伝統を守りつつ時代に合った物作りを続けている。2003年からはミラノ国際家具見本市・WA-Qu展などにも出展し、日本の素晴らしい技術を世界にも発信している。
桐の国の伝統文化、加茂の桐たんす
桐たんすは湿気が高くなると桐材が膨張して気密性が高まり、たんすの中に湿気が侵入するのを防いでくれる。逆に、乾燥している時は気が収縮して蒸れないように調整してくれることで、たんす内部の湿度を一定に保ち湿気から衣類を守る。桐は湿気の多い日本の気候に適した材と言える。そして、湿気を吸ったり吐き出したりという桐の“呼吸”のような機能は、年月が経っても劣化しない。
引き出しを閉めると、中の空気が押されてもぐらたたきのように他の引き出しが浮いてくることがあるが、これは桐たんすの気密性が高いことの証だ。
さりげなく光る桐たんす職人の伝統技
たんすを組み立て、塗りと乾燥を繰り返した後、カンナで表面を磨く。フラットに仕上げられた表面は本当に美しい。カンナがけがうまくできていないと塗装にムラが出来て、綺麗に仕上がらない。カンナがけは桐たんす製造において“要”の工程だ。カンナがけは見た目以上に力が必要で、ただ引くだけではく力のかけどころがポイント。伝統工芸士でもある工場長の坪谷哲男さんがカンナがけをすると桐材の表面が美しく仕上がっていく。
桐は軽く、充分に乾燥させると収縮率が非常に小さくなり、狂いが少ないため、いつまでも美しい姿を保ち続ける。桐材の特徴と加茂のたんす職人の技が交わることによって、最高の美しさを引き出している。