世界の版画家、棟方志功
日本を代表する版画家、棟方志功。1903年、青森市に刀鍛冶職人のもとに生まれ、小さいころから絵に興味を持ち、21歳のときに絵の勉強のために上京した。上京5年目の1928年に帝展で初入選を果たす。同じ頃から版画の道にも入った。絵とともに作品制作にいそしみ、すぐに展覧会でも入選をするようになる。
その後1952年、スイスで開かれた第2回国際版画展で優秀賞を受賞。1955年にはサンパウロ・ビエンナーレに代表作のひとつとして知られる「釈迦十大弟子」などを出品し、版画部門の最高賞を受賞した。さらに1956年ベニス・ビエンナーレに「柳緑花紅頌」などを出品、国際版画大賞を受賞し、日本だけでなく世界を代表する版画家となった。
棟方作品、国内最大の収蔵数
そんな棟方志功の芸業を後世に伝えるため1975年、青森市に開館した棟方志功記念館。
本館へ向かう道には、池泉回遊式の日本庭園が配され心を鎮めてくれる。季節ごとに木々は色合いを変え、四季折々の見事な風情を感じさせてくれるストロークとなっている。
2012年に鎌倉市にあった棟方板画館を吸収合併し、収蔵作品は国内最多となった。「釈迦十大弟子」をはじめとした板画作品のほかに、「倭画」と呼ばれる繊細な肉筆画や、油絵、書などの作品が展示されている。そのほか、版木を含んだ貴重な資料も展示紹介されている。
一点一点をじっくりと
「あまり数多くの作品を展示して、観覧する人々が疲れたり、作品の印象が薄くなったりするよりは、やや少なめの作品数でも一点一点をじっくり見て欲しい」というのは棟方志功自身の希望だったいう。そのため、展示室もさほど大きくなく、展示作品数も目移りするほど多くない。作品の前をいく中田の足も、その都度その都度止まり、じっくりとした足取りだった。ただし、さきほども言ったように収蔵数は多数。それらをより多くの人に観てもらうために年4回の展示換えをしているそうだ。
青森が生んだ世界の巨匠、棟方志功。圧倒的な迫力と、穏やかな繊細さ。その世界にどっぷりと浸れる空間だ。