酒と関係の深い秋田県
日本有数の米の産地、秋田。ということはつまり、日本酒の原料となる米が豊富ということ。また、寒冷な気候も酒造りには最適。ということはつまり、秋田が美酒王国になるのは当然なのだ。
秋田では古くから酒造業は盛んで、江戸時代初期、藩内には746もの酒造家があったとされる。酒造減産令が出された際も、佐竹藩は「領民に迷惑不便が及ぶ」として幕府に陳情。酒造家の保護策をとったといわれる。美酒王国を育む土壌と気風はずっと古くからあったのだ。
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白神山地の伏流水を使う白瀑
現在でも数ある蔵のなかから今回おじゃましたのは、1901年に創業した山本郡八峰町にある山本合名会社。「白瀑(しらたき)」という名の酒が看板。全国に先駆けていち早く大吟醸酒を商品化し、全国で愛されている。
こちらの仕込み水は蔵の裏にそびえる白神山地の伏流水。日本海の沿岸に位置するこの蔵において、伏流水を蔵まで引くのは簡単なことではない。それでも3キロという自家水道を引いて白神山地の澄んだ水を使用するにいたった。その水で酒米を作り、2010年からは純米、純米吟醸、純米大吟醸のみを生産する純米蔵となった。水にしても米にしてもとことん品質にこだわった酒造りをしているのだ。
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原料と現場にこだわり、美味しい酒を造る
蔵に入ったとたんに響くのはビートルズのナンバー。お話を伺った山本友文社長が蔵に入ってから、酒造りを大きく変えたという。なかでも一番大きく変えたのは、働く人の意識だという。
「わたしが入ってきたときは、何というか、昔からのルーズな感じが残っていた。それを変えました」
蔵に流れるビートルズも”働きやすさ”のためのひとつだ。古くからの慣習という意味では杜氏制を廃止したのも大きなこと。蔵人のみんなが責任をもって仕事ができるようにした。責任を持つということは、中核として参加するということ。みなが意見を出し合って酒を造れる土壌を作った。原料にこだわり、現場にこだわる。だからこそ”本当に”おいしい酒が生まれるのだ。
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