金賞ダブル受賞のワイン
「2013国産ワインコンクール」において、ロゼ部門、スパークリング部門の2部門で金賞を受賞したワインが、ここ高畠ワイナリーで作られたワインだ。
ロゼ部門金賞の「高畠クラシックマスカット・ベリーA」はドライタイプのロゼ。どんな料理にもピッタリの飲み口が人気のワインだ。スパークリング部門は「嘉-Yoshi-スパークリング シャルドネ」が受賞。スパークリングというと、その泡の感触を味わって終わりというものも多いが、このスパーリングは爽やかな酸味がありながらも、しっかりとした旨みが広がるワインだ。
高畠ワイナリーがあるのは山形県南部の置賜地方。ワインというと山梨がすぐ思い浮かぶかもしれないが、置賜地方も山梨同様に盆地である。そのため、昼夜の寒暖差が大きくぶどう栽培に適した土地なのだ。高畠町は食用のぶどうの産地としても有名。高畠ワイナリーでは、契約農家のほか自社畑でもぶどう栽培を行い、ぶどうそのものの品質向上を目指している。
伝統製法で造られたシャルドネのワイン
まずは蔵を見学させてもらう。お話を伺ったのは社長の村上健さんと醸造責任者の川邉久之さん。高畠ワイナリーのワインでやはり注目なのはシャルドネ。ワインとしてはもっとも有名といってもいいかもしれないぶどうの品種だが、実は海外のものと日本産のものとではかなり味の差が出てしまっているというものもある。
そこで見せてもらったのがフレンチオーク樽で発酵、熟成している伝統的製法で造られたシャルドネのワイン。川邉さんが樽から直接グラスに注ぎ、中田に手渡す。「おいしい」と一言。「すごく“きちんとした”味がする」と中田が言うと、川邉さんは「どうしてもちゃんとした味のするシャルドネはなかなかできなかったんです。それでも伝統的な製法に学ぶことでこの味ができました。そう言ってもらえるとうれしいです。」と話す。
ワインを楽しむということ
また高畠ワイナリーでもうひとつ注目のラインがピノ種を使ったワインだ。川邉さんは「例えばピノブランなんですけれど」と言って、こう説明してくれた。
「この一本で前菜からメインまで進めるワイン。どうしてそういうワインを作りたかったかというと、食生活、食文化の変化を考えてのことなんです。例えばカップルで食事をしに行ったとき、多くの場合、二人で一本のワインを飲むのがせいぜいですよね。だから一度の食事を通して、飲めるワインというのを造りたかったんです」
中田がそのワインを飲む。たしかに個性が強すぎずに飲みやすいワインだ。けれども、キレやミネラル感があり、主張しすぎないということもない。ワインを楽しみながら、食事も楽しめるといったワインだ。
また、川邉さんは「どんなワインを目指しているか」という中田の問いに対してこう答えてくれた。
「醸造の教科書には、ぶどうは優しく絞ると書いてあるけれども、優しく絞るとうまみは残りカスのほうに残ってしまう。それはなぜなら一番おいしいのは皮の裏だから。ワイン造りは果汁を絞ったときに8割ぐらい決まってしまうのではないかと思うんです。農産物のうまみをいかに引き出すか。酵母の研究をして、化学反応でうまさを出すというのは実はそのあとの話だと思うんです」
川邉さんはワイン醸造の講師としても活躍された方。その人が素材のうまみを引き出すと言う。たしかに高畠ワイナリーのワインは、ぶどうを感じさせてくれるワインだった。