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手作りの磁器
愛媛県松山市の南端に砥部(とべ)町という街がある。地名にある通り、古くは砥石の産地だった街だ。江戸時代になって、砥石くずを原料に器がつくられるようになり、砥部焼へと発展。1976年には国の伝統工芸品に指定された。
砥部焼には、白磁、染付作品、青磁、天目(鉄釉)の4種類がある。今回お邪魔した工藤省治さんの春秋窯では、主に白磁器と染付作品を手がけている。中田もろくろを回して小皿づくりにチャレンジ。
民族や歴史を超える
全国の美術館やギャラリーなどで陶磁器展が開かれる工藤さんの器には、ファンも多い。たとえば、温かみを感じさせる白磁に、独特の唐草模様の絵付け。これは、現代の砥部焼を代表するデザイン。20年ほど前に工藤さんが発案した意匠で、イランの博物館で見た唐草模様に刺激を受けて誕生したのだそう。
日本の伝統と海外の伝統――よいものは民族や歴史を超えてつながっていく。
その唐草模様の美しいデザインは、「工芸文明は時代の尺度だ」という工藤さんの考えを体現しているかのようだ。