NIHONMONO「にほん」の「ほんもの」を巡る旅マガジン

透明感のある上品な白さと造形美が際立つ「井上萬二窯」

透明感のある上品な白さと造形美が際立つ「井上萬二窯」

有田焼といえば、美しい色絵に彩られた磁器を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、磁器作家・井上萬二さんの作品のほとんどは加飾されていない白磁だ。それでも萬二さん作った器は、派手に色付けされたものよりも遥かに大きな存在感を見せる。透き通るように真っ白な磁器は、曲がりくねり絡みあい、どんなふうにつくりあげたのか想像もつかないような複雑な造形。最新の3Dプリンターでも不可能ではないかと思われるような形を、ろくろと手だけで作り上げる。その高い技術で、彼は有田焼白磁の重要無形文化財保持者(人間国宝)となった。
「私にとっては形そのものが文様です。工芸ですから、用と美を兼ね備えていなければならない。複雑な形のものも作りますが、実は平凡な器がいちばん難しいんです。ひとつの茶碗を作るのにどうしても納得できず1年くらいかかったこともあるんです」(萬二さん)
1929年生まれの萬二さんは、軍人から復員し、十二代目酒井田柿右衛門のもとで磁器作りを学んだ。修行7年目のときに大物成形ろくろ師として名高い初代奥川忠右衛門の技術に惚れ込み、彼の門下生に。以来、ひたすらにろくろと向き合ってきた。
「展覧会などがあれば海外にもいきますよ。旅行すれば刺激を受けるし、それが作品にいきてきますから」(萬二さん)

現在、佐賀県西松浦郡有田町に孫の祐希さんとともに窯とギャラリーを構える。祐希さんは玉川大学芸術学部を卒業後、ファッションアパレル業界を経験した後に故郷へ戻り、2012年から祖父・萬二さんのもとで白磁の伝統技術を継承しながらもファッションブランドとのコラボレーションや焼きものでアクセサリーを制作するなど、新たなことにチャレンジする注目の作家だ。

萬二さんによると、これまでに萬二さんの元で学んだ人は500人を超え、海外にも数多く存在するそう。
「人に教えるのは大変ですよ。自分で作るだけなら10の力でじゅうぶんですが、人に教えるには12~13の力が必要。昔の技術を受け継ぎながら、いまの焼き物を作る。そうやって伝統が受け継がれていきます。昔のままにやっているだけでは発展はしません。常にチャレンジが必要だし、新しい人を育てていかなければならないんです」(萬二さん)
「焼き物に向いているのはどんな人ですか?」(中田)
「不器用は駄目だけど、器用すぎても駄目。器用だとすぐに形ができて、努力しなくなる。どんなことも同じでしょうが、毎日同じ努力を続けられる人が結局大成します」

萬二さんは言う。「白磁に完成はない。90歳になっても勉強です」。楽しそうに白磁を語る萬二さんとお話しさせていただくと、この方は心から白磁を愛しているのだということが伝わってくる。萬二さんは、有田焼創業400年を迎えた節目に際しては、20年をかけて、すべて「異なる」400個の白磁の作品を生み出した。萬二さんの作陶の追求に、「これでいい」という終わりはない。

ACCESS

井上萬二窯
844-0028 佐賀県西松浦郡有田町南山丁307
TEL 0955-42-4438
URL https://manjiinoue.com/